7時間が長寿にべストな睡眠時間
睡眠の量と死亡率とを調査した大規模な研究はいくつか行われています。結論を先にいってしまうと、およそ7時間程度の睡眠時間をとっているひとが、もっとも長生きです。
代表的な調査を見てみましょう。いちばん有名なものは、1950年代から行われた、全米ガン協会による調査です。協会の協力のもと、なんと100万人以上の成人を対象に、睡眠はもちろん運動や喫煙など生活習慣についての大々的な調査を行ったのです。
それ以降、さらに6年間の死亡率との関連を見てみたところ、死亡率ともっとも関連があったのは、睡眠時間でした。
おめでたくない高い死亡率となったのは、睡眠時間が4時間未満、あるいは逆に9時間以上も眠っているひとたちでした。特に長く眠っているひとのほうが問題で、8.5時間以上の睡眠時間をとっているひとは、6.5~7.5時間睡眠のひとよりも死亡率が20% もアップしました。
イギリスやフィンランド、オーストラリアでも似た研究はあるので省略して、日本の名古屋大学大学院にいらした玉腰先生の行った調査研究を紹介しましょぅ。
40歳から79歳の日本人男女約10万人を対象に、睡眠時間や飲酒、喫煙、運動などの生活習慣を10年間追跡しました。調査した全員の平均睡眠時間は、男性7.5時間、女性7.1時間で、そのうち死亡率が最も低かったのは、男女ともに睡眠時間が7時間のひとたちでした。
さらに詳しく見ると、睡眠時間が長くなっても短くなっても、死亡率特高くなってしまいます。睡眠時間が4時間以下のひとは、7時間のひとに比べて男性で62%、女性で60% も死亡率が高くなります。また10時間以上寝ているひともそれぞれ73% 、92 % も死亡率がアップしています。
面白いのは、従来いちぼん健康的だといわれてきた8時間睡眠ですが、7時間睡眠に比べて男性で1% 、女性で23% 、それぞれ死亡率が高くなってしまいました。
過不足なく眠るのがいちばんの薬
常識的に考えられるのは、睡眠時間が短過ぎる、あるいは長過ぎるひとには、病気がかなりの割合で見られるのではないか、という仮説です。
持病の痛み、しびれなどの苦痛で、睡眠の質が低下する。うつ病などの精神障害もおそらく少なくないと思われます。睡眠時間が長過ぎるひとは、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害を抱えている可能性があります。
長時間ベッドに入っていても、本人の気が付かないところで繰り返し起きてしまっていて、浅い睡眠のままでダラダラ過ぎている、不健康な睡眠状態です。こう書いてしまうと「ああ、オレの人生残りわずかだ…」と悲観的になるかたもいるかもしれません。
しかし前にもど説明したとおり、睡眠時間の必要量はひとそれぞれですから、短・長時間睡眠が絶対100%短命の原因というわけでありません。
ずっと4時間睡眠、あるいは9時間睡眠で長寿を迎えているかたも少なくありません。このあたりは確率論なので、「睡眠時間が短い(長い) はど、寿命が短くなる可能性が高くなる」と表現したはうがベターかもしれません。人間に必要な睡眠時間は、個人差があるのですから、5時間睡眠で調子よく健康に暮らしているひとが、長生きのためにムリヤリ7時間睡眠を目指すのは、ナンセンスです。
自分に合った睡眠時間と睡眠スタイルを知ってそれをキープするのが、長持ちのコツだと思います。