3つのホルモンが睡眠の質をあげる

質の良い睡眠はどんな睡眠ですか? というクエスチョンには、「睡眠中に分泌されるホルモンが充実しているのが良い睡眠です」というのが1つの回答と言えるでしょう。

睡眠には特に困っていない方もいらっしやれば、いつも快眠という人もいれば眠れない、日中眠いなど睡眠の問題を抱えている方もいらっしやると思います。

ご自分の睡眠に満足できない方に、満足できる睡眠とはどんな感じですか?とお聞きすると、「ぐっすり眠れてスッキリ起きられる」とお答えになります。

満足いく睡眠の価値観は、人それぞれだと思いますが、ここではその「ぐっすり」と「スッキリ」をつくるホルモンに着目してみましょう。

睡眠中は時間ごとにホルモンが分泌されて、脳と体は、かなり忙しく作業をしています。その中でも「ぐっすり」と「スッキリ」に重要なホルモンは3つです。

  1. 入眠から3時間以内に最大に分泌される成長ホルモン
  2. 入眠から3時間後に分泌される起床時に分泌されるメラトニン
  3. 起床3時間前から分泌され起床時に最大に分泌されるコルチゾール

この3つのホルモンを適切なタイミングでたっぷり増やすことができれば良いということです。

しかし、これらのホルモンがすべて同じ因子で増えてくれれば「これさえやればOK

! 」と、話は単純なのですが、3つとも別の因子で分泌王が増えるので、少々ややこしい仕組みになっています。私たちはこのややこしい仕組みによって、朝起きられなかったり、眠った感じがしないなどの悩みを抱えるわけですが、反対に、このややこしい仕組みのおかげでヒトの柔軟性がつくられ、どのような環境にもしなやかに対応することができます。この3 つのホルモンについて、その特徴と増やすために必要な因子を見ていきましょう。

疲れれば寝られるはず…と思っている

「疲れたから眠る」というホメオスタシス機構は、疲労によって傷ついた神経や細胞を回復させるので、休むという言葉がぴったり当てはまりますが、ホメオスタシス機構は、単に回復を担っているわけではありません。

ホメオスタシス(homeostasis)とは、生体が変化を拒み、一定の状態を維持しようとする働きのこと。 「恒常性」とも呼ばれます。

「疲れた」という状態を、脳の情報処理量という視点から見てみましょう。

1日仕事をすると、脳にはたくさんの情報が溜まります。溜まった情報は、その意味を知らなければなりません。脳の中で、その情報にはどんな意味があって、どのカテゴリーに入るのか、という処理がされます。

一度にたくさんの出来事が重なれば、それだけ頭の中はごちゃごちゃになるので、情報処理作業には負担がかかります。

さて、私たちは、頭がごちゃごちゃになると頭の整理をしたくなるので、起きているうちに今日の反省と明日以降の予定を立てようとします。忙しければ忙しいほど、ごちゃごちゃ度がひどく、整理するにも時間を要するので、「休んでいる暇などない」と考え、睡眠を削ります。

しかし、実は、このごちゃごちゃを整理する作業は、睡眠が担うべき作業なのです。睡眠中には、脳内に溜まった情報が整理されます。不要な情報は消去し、問題が解決できそうな既存の情報と結びつける作業です。

これは、比喩的な表現ではなく、実際の脳内の神経細胞は、その重要度が選別され、不要な細胞はアポトーシスという作用によって、死滅します。これによって、無意味な細胞にエネルギーを奪われることがなくなり、脳内のエネルギー効率が向上するのです。さらに空き容量が増えたことで、新しい神経細胞が生まれやすくなります。

せっかくこんな働きがあるのに、睡眠を削ってでも起きているうちになんとかしようと思ってしまうのは、もったいないことです。睡眠中には意識がないので、私たちはどうしても意識がある覚醒している時間を重要視しがちです。疲れたらどうせ眠るんだろうから、起きていられるうちは起きていようと考えることもあるのではないでしょうか。

しかし、脳というものをいったん自分から切り離して、その働きを見てみると、意識がない睡眠中の働きは、今の自分を大きく成長させる重要な資源だということが分かっていただけると思います。睡眠は、今日の疲れをとるだけではなく、今日の反省をし、明日の準備を整えるものでもあるのです。

ただし、その作用は、ただ眠るだけではうまく働きません。睡眠の質を上げることで、脳内の情報整理能力が上がるのです。そこで次は、睡眠の質を上げる3つの重要なホルモンを見ていきましょう。

眠りの悩みを解消しよう!
https://sleep-guide.net/important/

 

反省をその日のうちに行うことが悪循環の原因

「何時に眠ればいいんですか? 」という質問はよくあります。ヒトは、「暗くなったら眠る」、「疲れたら眠る」という仕組みなので、本来は眠る時間を考える必要はありません。

私たち人間の生体リズムは、就寝時聞からではなく、起床時聞からスタートします。

脳のマスタークロックである視交叉上核が光を感知すると、体内の細胞に存在する時計遺伝子の活動時間が決まり、生体リズムが刻まれます。

つまり、眠る時間はその日の起きた時間によって決まるということです。例えば、休日に昼前まで眠っていて、明日は月曜日だから早めに眠ろうと思ってベッドに入ったのに、結局なかなか寝つけなかったというご経験があると思います。

これが、眠る時間は起きた時間によって決まるという現象が実感された場面です。通常は、成人では起床から柑時間後、子どもではH時間後に夜間の自然な眠気がくることが知られています。

脳にとっての生活のスタートはあくまで起床したときなので、「何時に起床するか」を決めることが重要です。ではなぜ、私たちは自分の適切な就寝時間を考えてしまうのでしょうか。

それを知るために、眠る前の行動を振り返ってみましょう。

忙しい1日がようやく終わり、眠る前はようやくひとりになれる時間です。ここで、頭の中では今日の反省をします。「Aさんにとっさに聞かれてああいう言い方をしたけど、こう言えば良かったかも」というように、今日の出来事を振り返り、修正すべきことをぼんやりと考えます。

一通り、この作業が終わると、次は明日の予定について考えます。「気になった本を調べておかなきゃいけなかった、明日訪問する取引先の会社の概要を見ておくんだった、それと…という感じで、やらなければならないこと、やり忘れていることが思い出されます。

頭の中ではこんな感じで反省と予定立てが浮かんでいるのですが、単調な毎日からちょっと抜け出したい気持ちで、テレビやネットをつけてしまい、なかなかやるべきことに手がつけられない。でも「その日のうちに反省しないと」と思い、睡眠を削ります。

そして、いざ眠ろうとするとなかなか寝つけなくなってしまいます。翌日は、というと、朝になってもなかなかベッドから出られず、イライラしてしゃべりたくない。「あれもこれもやらないうちに今日になっちゃった」と昨夜の自分に苛立ちつつ、焦ります。出勤して仕事が始まると眠くてしょうがなく、デスクに飲み物をたくさん置いて頻繁に飲んだり、気分転換にコンビニに行ったりするけど、帰ってくるとやっぱり眠い。夕方頃にドタバタと忙しくなり、夜に帰ってくるとどっと疲れが出てしまい、せめて気分を変えようとテレビをつける。

このような生活サイクルだと、毎日が必要以上に忙しく感じてしまいます。この中に、疲れているのに睡眠を削る理由が見つかります。

それは「その日のうちに反省しないと」という考えです。「反省はその日のうちにしなさい」この言葉は、子どもの頃や学生時代に、誰もが一皮は言われたことがあるのではないでしょうか。

どうやら、私たちはこの考えにしばられて、自ら睡眠時間を削ってしまうようです。それでは、反省をその日のうちにせず、家に帰ってきたらバタンと眠ってしまったという日はいかがでしょうか。

やらなければならないことがあったはずなのに昨日は寝ちゃったと思いつつも、頭がスッキリしてやるべきことは明確になっていたというご経験がありませんか?

実は、睡眠には、捨ててよい記憶を捨て、本当に反省すべき記憶だけを残すという働きがあるのです。