不眠とストレスの関係

ストレスはさまざまな形で体に影響する

ここ数十年の短期間の間に日本だけでなく世界はめまぐるしく進歩し、なかなかのんびりとは生きられない時代になったようです。
現代では、ストレスという言葉が当たり前のように行き交うようになりました。特定の病気が診断されないときには「ストレス」という言葉で片付けられてしまうケースも増えています。

症状がある人は、何らかの形で、このストレスを感じている人たちです。ストレスは、心地よい眠りの大敵です。わたしたちはどういうときにストレスがたまったと感じるのでしょうか?

仕事が忙しく、常に緊張していてホッとひと息つく間もないとか、いらいらした状態が続いているとか、ひどく気を使って精神的に疲れているというときです。そして、こうした原因によって心にたまったもやもやは、精神的なものであるにもかかわらず、体に影響を及ぼします。精神的な不安ヤプレッシャーが、自律神経とホルモンの中枢に作用することは、医学的にも解明されています。

自律神経やホルモンの異常は、あらゆる症状を引き起こす可能性があります。首筋や肩が痛くなったり凝ったり、胃腸の調子が悪かったり、抵抗力がなくなり風邪を引きやすくなったり、体のあらゆるところに、いろいろな形で出てくるのです。

こちらのうつの代表的な症状は参考になります。

日頃の生活で「うつ」とは気づかないケースにこそ注意しなければなりません。
女性の場合だと、生理に関連して症状が出るケースが多いので注意します。

こうした症状はだれでも経験することですから、すぐにはストレスが原因だとは気づきません。「朝に弱い」人の中にも、ストレスが原因の人は多いはずです。単に低血圧なだけかと思っていたら、思わぬところに原因があるかもしれないのです。

原因不明のストレスは不眠が解消すれば治るケースが多い

眠りを妨害するストレスの最たるものは、「うつ状態」です。うつ状態になると、寝つきが悪くなり、眠ってもすぐ目覚めてしまうという浅い眠りばかりが続きます。
熟睡できないので、十分に寝たという気がせず、昼間はだるくて仕方がありません。うつ病の場合は、生きる気力がなくなり、元気もなくなるという精神的な症状が伴うので、多少なりともわかりやすいのですが、前にも述べたように、「仮面うつ病」は、その名のとおり、精神的な症状が表に現れません。

悩みは何もないのに、眠れない、だるいという身体的な症状しか出てこないので、病気だという自覚が生まれにくくなります。では、仮面うつ病の原因であるストレスとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

仮面うつ病が最も多いのは、20代後半の女性だと思います。仕事にも慣れ、責任も出てきて、ある程度の自信もついたころです。また、もっとできるんじゃないか、いいところを見せたいという欲も出てくるころです。若いから、女だからといってなめられてはいけないと、多少無理をしてもがんばってしまう時期でもあります。

しかし、実際は、まだまだうまく処理できないことがあって当然なのです。それを120%の力で無理やりがんばろうとするから、少しずつストレスがたまってしまいます。眠れない、体がだるいという症状が出てきているのに、弱音をはいてはいけないと、休まずにがんばって、ついには体が持たなくなって来院するのです。

このように、仮面うつ病のストレスは、がんばり屋で弱音をはかないタイプの人にたまりやすいといえます。原因不明の不眠で悩んでいる人は、ちょっと立ち止まって自分を振り返ってみてください。

プレッシャーや心配事は脳を眠らせてくれない

きているときの人間の脳は、さまざまな刺激に自在に対応する俊敏性をかね備えています。何が起こっても瞬時に対応できかように、常に緊張状態で身構えているのです。それくらい緊張しているわけですから、集中して頭を使ったあとは熱くなり過ぎていて、しばらく冷やしてからでないと眠れないこともあります。

また、眠ろうとしたときにちょっとした刺激があると、びくっと再度緊張してしまうのです。プレッシャーや心配事は、ストレスとなって心に居座ります。ストレスに居座られていると、脳は常に力を抜けません。
したがって、ストレスは脳に緊張状態を強いているようなものです。ふとんに入ってもあれこれ考えてしまい、脳が緊張から解放されなければ、なかなか眠ることはできないでしょう。

ストレスの原因は、初めのうちはささいなものである場合も多いのです。小さいうちにきちんと解決するか、少なくとも眠るときは忘れるような努力が大切でしょう。

スムーズに起床できないからストレスがたまる

朝起きられないことが、ストレスとどう関係があるんだろう?と思われるかもしれません。しかし、「朝に弱い」ということは、社会のしくみに出遅れてしまうわけですから、それによってストレスがたまる部分は、実に大きいのです。

朝の通勤途中のいらいらから始まり、会社に着いたと思ったら、考える余裕もなくなく会議が始まる。精神を落ち着かせようとあせるけれども、なかなか、うまくいかない。
午前中はさえない頭に、自分自身でいらついてしまう。仕事ができても、遅刻の常習者では借用されない。朝食を抜けば便秘や生理不順などを引き起こし、体のバランスが狂い、精神のバランスも悪くなる。こうしてたまったストレスが体に影響し、だんだんと夜の寝つきが悪くなれば、なおさら、朝起きられないという悪循環を招きます。
朝起きられないことがストレスを生み、そのストレスがまた朝起きられなくしているなんて本当にバカらしいのです。

熟眠を妨げる要因(お酒、カフェイン、睡眠導入剤)

お酒はたくさん飲むとNG

「寝酒」という言葉があるように、昔からお酒は睡眠を誘発するイメージが強いようです。確かにお酒を飲むと眠くなります。赤ちょうちんを見ると反射的に気持ちがうずうずしてしまうという酒飲みがいます。お酒を抜くとなかなか眠れない習慣がついてしまっています。

簡潔に言うと、寝酒(ナイトキャップ)の注意点にまとめてありますが、ここでは寝酒のデメリットについても詳しく見ていきたいと思います。

寝る前にちびちびとお酒を飲み、ポーっとしたころ目を閉じると、何ともいえない心地よい眠りに誘われるという人もいます。たしかに、アルコールには、脳をぼんやりさせる作用があります。これによって、眠くなったと感じるわけです。

しかし、飲み過ぎると、これがかえって逆効果になります。飲み過ぎによって神経が麻痔すると、ノンレム睡眠とレム睡眠のセットでまわっている通常の眠りのバランスが崩れ、結果として眠りが浅くなる傾向があるからです。

一時的には、非常に深い睡眠が得られたような気がします。ですが、通常のリズムではありませんから、まだ起きる時間でもないのに、突然目が覚めたりするのです。

また、お酒には水分を奪うという性質があります。酔っていい気持ちで帰って、そのままぐっすり寝込んでしまったのに、突然夜中に喉が渇いて目覚め、がぶがぶと冷たい水を飲んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。

一時的に気持ちよく眠りについても、こうして夜中に目覚めてしまっては、眠りが分断され、快適な眠りは得られません。そのうえ、度を越した酒量を摂取した翌朝は2日酔いも重なりますから、よけいに起き上がることがつらくなります。ただでさえ「朝に弱い」のに、二日酔いのつらさが加わったのでは、よい目覚めが期待できるはずもありません。

アルコールは睡眠薬ではない!

お酒は寝つきをよくする効果はあるけれど、少量以上はかえって害になると考えたほうが無難です。それでは、少量とはどのくらいかといわれると、これは千差万別です。どのくらい飲めばどのくらい酔うかというのは、体内にあるアルコールの分解酵素の量によって決まるのですが、その分解酵素の量は人によって違います。

ですから、寝る前にブランデーを1杯というように、ちょっといい気持ちになって眠りやすくなったかな?という程度におさえておくほうが得策でしょう。

ただ、アルコールというのは、毎日飲んでいると、だんだん同じ量では酔わなくなります。つまり、同じ量では以前のいい気持ちが得られなくなってくるのです。

「いい気持ち」を得るためには、飲む量を増やすことになります。これを繰り返していると、体によくないばかりか、飲まないと眠れなくなってしまうのです。この状態がどんどん高じると、「アルコール依存症」予備軍にもなりかねません。アルコールは、眠るための薬ではないという自覚が大切です。

お酒というのは本来、楽しみのためにあるものです。風呂上がりやスポーツのさかなあとのビール、おいしい肴で飲む日本酒など、アルコールならではの味わいもあります。ぼんやりとバーで飲む1杯のウイスキー、仲間とわいわい騒ぎながら飲むチューハイが、違う世界に運んでくれることもあるでしょう。

悩みを抱えていると快適な眠りは得られませんから、お酒で発散するのは有効だともいえます。しかし、眠りという点だけで考えれば、多量のお酒はよい眠りを作り出すことはできないのです。

寝る前に脳を興書させると眠れない

眠っているときと起きているときとでは、脳の働きは異なります。眠っているときは、外界からの刺激を受けても反応しません。ですから、声をかけても目が覚めないのですが、スイッチを切り換えるように、脳が刺激に反応しなくなるわけではありません。

目が覚めてもしばらくはぼんやりしているように、眠りにつくあいだも、だんだんと脳が刺激を感じられなくなり、ぼんやりして、最後には声をかけても気づかないほどの深い眠りに入るわけです。ですから、脳がそろそろ眠る時間だと刺激に鈍感になってきたときに、急に興奮するようなことが起これば、脳は驚いて身構え、またバッと目が覚めてしまうということになります。

「興奮する」というと、地震が来て飛び起きるといった状況をイメージしがちですが、深夜テレビでおもしろい番組を観るとか、どきどきしながら推理小説を読むという刺激でも、十分に脳は興奮してしまいます。
明日の会議のことが気になるといった心配事も、逆に明日のデートが楽しみだといったうれしいことも、脳には強烈な刺激になってしまうのです。そ

ろそろ寝る時間だというときには、テレビを消し、本を読むならちょっと読んだらあきてしまうような内容のものにしたほうがいいかもしれません。

また、体が疲れれば快適な眠りが得られるだろうと、寝る前にジョギングをする人がいますが、これも逆効果です。激しい運動も脳を興奮させてしまいます。そのうえ、寝るときには下がり始めるはずの体温が上がってしまうので、なかなか寝つけないということになります。

睡眠導入剤は毒にも薬にもなる

ストレス社会といわれている現代では、くたくたに疲れているのに寝つきが悪い、ぐっすり気持ちよく眠れないという人が増えています。
睡眠が人間の健康にとって、どれだけ大切なものかを実感するのは、心地よい睡眠が得られなくなってからなのです。

ここにある方(Aさん)の例があります。
Aさんが不眠を訴えるようになったのも、入社3年目に大きなイベントの進行を任されたのがきっかけでした。やらなければいけないことは山ほどあるし、不安とやる気が混じり合い、力が入ってしまったのでしょう。
それまでは、横になったと思ったら、気持ちのよさそうな寝息をたてていたのに、ふとんに入ってからもなかなか寝つけない日々が続きました。

数日、経過すると、だんだん体はだるくなり、動きも鈍くなってきたといいます。倦怠感が強く、頭もぼんやりともやがかかったようになり、判断力も想像力も鈍ってしまったそうです。睡眠時間が足りないから、朝の目覚めもすっきりせず、力がありません。
やっとの想いでふとんを出て会社に向かうことになります。いつもなら、お酒を飲んでワッと騒いで忘れてしまうような性格なのですが、今回は責任が重くのしかかっていたために、酒場に繰り出す気にもなれなかったといいます。

そこで、このままでは仕事にも影響が出ると心配し、薬局で相談し、軽い睡眠導入剤を買ったのだそうです。その夜、さっそく薬を飲むと、強烈な眠気に襲われ、ふとんに入ったとたんに眠ってしまったといいます。それまでなぜ眠れなかったのか不思議なほどで、翌朝もバッと気持ちよく目覚めたそうです。睡眠導入剤も、この1回でやめれば問題はありません。

どのような原因による不眠だとしても、眠ろう眠ろうと過度に神経質になったり、不眠によって体がぼろぼろになってしまうくらいなら、一度ぐっすり眠ったほうが健康にもいいでしょう。

睡眠導入剤で眠った翌日は必ず不眠になる

Aさんは、久しぶりに気持ちよく出勤し、仕事に熱中できたといいます。そして、残業までして家に戻りました。お風呂に入って、明日もがんばるぞ! とばかりにふとんに入ったのですが、いっこうに眠くならないのです。しかも、すっかり目がさえてしまって、意識もはっきりしたままなのだそうです。

これは困ったと思い、また睡眠導入剤を手にとりました。効果は抜群で、その日は前日と同じようにぐっすり眠れたのですが、次の日の夜になると、また眠れなくなってしまったのです。こんな日が数日続いたあと睡眠外来を受診しました。

これは、まさに睡眠導入剤による眠りの特徴なのです。睡眠剤の眠りは強烈で、眠るのはこんなに簡単だったのかと思うくらい熟睡できます。
そして、翌日は「ああよく寝た」と、気持ちよく日が覚めるのです。そして、1日中、爽快な気分で仕事ができます。問題なのは、その日の夜です。寝ようと思っても眠れなくなるのです。
前日に熟睡、というより爆睡しているから、眠れなくても仕方がないのです。睡眠導入剤による眠りは、熟睡のあとに眠れない1日がセットされていると考えなければいけません。それを知らずに、前の日のように熟睡できるなら?と思って、また薬を飲んでしまうと、やめられなくなってしまうのです。

睡眠薬の作用、副作用についてはこちらに詳しく紹介されています。

睡眠導入剤の眠りは自然の眠りと違う

睡眠導入剤の効果は抜群です。しかし、睡眠導入剤による眠気と自然な眠気とは、まったく次元の違うものなのです。わたしたちは毎日、疲れて眠くなってからふとんに入るかといえば、そうではありません。あまり眠くはないけれど、そろそろ寝る時間だからとふとんに入り、ぼんやりしたり、スタンドをつけて本などを読んでいるうちに、眠気に襲われるという場合も多いはずです。

睡眠導入剤というのは、こうした眠りにつくまでの自然のリズムをいっさい無視し、薬の作用によっていきなり眠りに落とすのです。
また、睡眠導入剤による眠りは、質の部分でも自然な眠りとは違います。通常は、ノンレム睡眠という深い眠りとレム睡眠という浅い眠りが1セットになり、それが何度か訪れますが、睡眠導入剤の眠りはひたすら深い眠りなのです。このことは、脳波を見ればすぐにわかります。

ですが、前後不覚に眠り込んだ本人には、どんな眠りだったかという意識もありませんから、十分に寝たという満足感だけが残り、だんだんとそれが忘れられなくなってしまうのです。やがて、通常の眠りではまどろっこしくなり、翌日も翌々日も睡眠導入剤に手が伸びます。そのままにしておけば、ついには、それなしでは眠れなくなるという、困った状況を引き起こしかねません。

長い人生のうちには、恋人が浮気したとか、離れていったとか、何かで頭がいつぱいになって眠れない日が続くこともあると思います。こうした日が1週間も続けば、頭はぼんやりし、体もだるく、何もかも忘れて眠りたいと思うこともあるでしょう。

そうしたときに、1粒飲むくらいなら仕方ありません。しかし、翌日眠れない夜が来ることを覚悟しておいてください。睡眠導入剤を常用しているうちに、通常の眠りでは満足できなくなり、薬がもたらす強烈な眠りでなければ眠った気がしなくなります。
これでは、もう「睡眠薬依存症」の道を歩むしかなくなるわけです。

今は便秘薬にしても、自然の作用を薬が肩代わりできるようになりました。ですが、これはあくまでも、そのときだけの対症療法であり、解決策ではないことを自覚してください。

長過ぎる昼寝やうたた寝は快眠の敵

寝る時間が惜しい!とよくいいますが、寝るのが苦痛だという人はあまりいません。がんばって働いたり活動した日の夜、ふとんに入って横になるのは、たいへん気分のいいものです。
ところが、なかなか寝つけなかったり、眠りが浅く、何度も目が覚めてしまったりではそうもいきません。では、どうすれば快適な睡眠が得られるのか。当たり前のようですが、寝る前には、当然ですが、きちんと起きていることが大切なのです。

つまり、長過ぎる仮眠は、快適な睡眠を奪うということです。快適な眠りとは、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に訪れ、しかも、ノンレム睡眠中に深く眠れるということです。深いノンレム睡眠は、起きていた時間が長ければ長いほど多くなるといいます。
10~20分程度の仮眠は夜の睡眠を妨げないといいます。

もちろん、毎日のことですから、眠らない時間が極端に多過ぎれば、いくら深い眠りが訪れようとも、次の日に影響するでしょう。
しかし、反対に、健康な体なのに、ごろごろ寝ていては、深い睡眠は得られないのです。「寝つきが悪い」人の話を聞くと、お昼ご飯を食べてから、つい2時間ほど眠ってしまうとか、晩酌のあと1時間ほどうたた寝をしてしまうという人が少なくありません。

普段よりも睡眠時間が少なかったときなどは、ちょっとの仮眠でずいぶん元気になることもあります。ですが、す。特に、夕方以降は禁物です。ですが、くれぐれも仮眠は長過ぎないようにすることです。特に、夕方以降は禁物です。い数時間前に眠っていては、寝つきが悪くなっても仕方ありません。

めりはりのないだらだらした生活をしていると、かえって疲れるといいます。それは、眠る時間と活動の時間がはっきりしていないために、両方の密度が薄くなってしまっているからでしょう。

カフェインは目をスッキリ覚ます効果

朝、1杯のコーヒーで眠気が覚め、頭がすっきりしたという経験を持っている人は多いと思います。それは、飲み物が入って胃腸が目覚めると同時に、コーヒーのカフェインが脳を刺激するからでしょう。

コーヒーのカフェインには目を覚ます効果があります。つまり、逆に考えれば、カフェインには眠りを妨げる効果もあるということです。
人によって効き目もさまざまですが、寝る2~3時間前にはコーヒーを飲まないという人もいるくらいです。ただし、カフェインが入っているのはコーヒーだけではありません。緑茶にも、コーラにも、今はやりの健康ドリンクにも入っています。食事が終わってから、お菓子を食べ、お茶やコーラを飲んでテレビを観ていたりすると、カフェインで寝つきが悪くなっているうえに、お菓子が胃腸にもたれて眠りが浅くなってしまいます。

また、寝る前に水分をとり過ぎると、寝入ったころにトイレに行きたくなり、目覚めることもあります。基本的には、寝る前にあまり飲んだり食べたりしないことです。風呂上がりに喉が渇いて健康ドリンクを飲むときは、ボトルの表示をよく見てください。カフェイン入りの飲み物はけっこう多いはずです。滋養強壮剤などはほとんどにカフェインがしっかり入っています。

体のことを考えて睡眠薬以外でぐっすり眠りたい方はこちら

朝の時間は使い方次第で有効な時間に

朝の60分は、夜の数時間分にも匹敵する

忙しい人ほど朝早く起きているという話をよく耳にします。1日のスケジュールびっしりで、夜は夜でパーティーや夕食会などに参加しなければならない人にとっては、朝がいちばんスケジュールをとりやすいのでしょう。

散歩をしたり、ジョギングで汗を流したり、仕事とはあまり関係のない本を読んだりなど、仕事に行く前の朝の時間というのは、やり方しだいで有効に使えるものです。それだけではありません。仕事のあとでは、ぼんやりしてしまって頭がしっかり機能しないことも多いかもしれませんが、朝ならば疲れがとれているのですから、脳も元気で集中力があります。
体も同様に、仕事のあとはくたくたですが、朝にはまた元気を取り戻しています。そのうえ、夜ともなれば飲みに行こうとか、ビデオやDVDを観ようなど、多くの誘惑が生まれます。

しかし、朝にはそういったものがありませんから、自分だけの時間を有効に使うことができるのです。とりあえず、1日でもいいですから、いつもより1時間早く起きてみてください。そして、散歩をするなり、本を読むなり、ゆっくり朝食をとって新聞を読むなりしてみてください。その時間の長さに驚くはずです。同じ時間なのに、朝の1時間は夜の何時間分にも感じることでしょう。

毎朝1時間が積み重なると大きな成果に

毎日早朝に行なわれる英会話のクラスに通い、2年間で十分に会話ができるようになった青年がいます。海外旅行が好きで、連休のたびに貯金をはたいてはさまざまな国に出かけたそうです。
そして旅行から戻るたびに、もっと英語ができたら行動範囲も出会う人もずっと広がるのに…と悔しい思いをしたといいます。何度目かの旅行の帰路、ついに彼は行動に移そうと決心しました。会社の近くに英会話のスクールがあり、初めは夜のクラスをとったそうです。

始まりは午後の6時半ですから、会社が終わってからでも十分間に合うのですが、残業が入ったり、上司に酒場に誘われたりして、なかなか続けられなかったといいます。仕事が忙しくなれば息抜きも欲しくなり、今日はまあいいかと、同僚と飲みに行ってしまう日もあったそうです。結局、休みがちになってしまい、授業も飛ばしてばかりでは身が入らず、思い切って朝のクラスに変更したのです。

最初のうちはつらかったものの、これまでのように休んで月謝をむだにしたくないという気持ちも強く、ときには這うようにして通ったそうです。

彼によると、起きるときはふらふらでも、クラスへ行けば、楽しくて目が覚めるのだそうです。15五人近くのクラスなのですが、一方的な授業ではないので緊張もするし、学生を中心にさまざまな職種の人たちなど、面白い顔ぶれが集まっているので、雑談をしても刺激になるというのです。そのうち、それが日課になり、毎日通って英語も上達するから行くのがますます楽しくなり、2年間続いてしまったといいます。毎晩仕事が終わってから、自分だけの自由時間を1時間とろうと思っても難しいものです。

しかし、朝なら決心しだいで十分可能になります。水泳でも、少しずつ絵を措くことでも、通信教育で資格を取ることでもかまいません。
何をするにしても、朝の一時間が積もれば大きな時間になるはずです。起きるのがつらくても、目標があれば励みにもなります。そのうえ、今まで気づかなかった何かを自分の中に発見したり、上達するという喜びを実感すると、ますます楽しくなるに違いありません。

これまでふとんの中にいた1時間も、積もれば自分の財産になるのですから、朝の時間は見過ごせません。

15分早く起床すれば1日に余裕がでてくる

早起きにはもう1つの利点があります。昼間中心の社会のしくみの中で、人より少し早くスタートが切れるということです。そして何よりもいいのは、何をするにも余裕が生まれるということでしょう。

いつもぎりぎりの時間に会社に着いていた人は、余裕を持って出社し、15前に席についてみてください。その日のスケジュールを反芻するもよし、コーヒーを飲みながら午後の会議の書類に日を通すもよし、上司と世間話をするのでもかまいません。追い詰められた気分で出社時問にすべり込む状態に比べれば、精神的にも余裕があり、体全体にエネルギーがみなぎるはずです。

人は心に余裕があれば、それが自信につながり、歩き方からしやべり方まで変わってきます。たとえば、会議で何かを提案するときも、下調べがきちんとしてあったり、確信しているときにはひと言ひと言が自信に満ちています。

反面、少し不安だったり、勉強不足だったりするとおどおどした態度になり、生彩を欠いてしまい、訴える力もなくなってしまいます。
いくら朝がつらいといっても、たった15分早く起きるだけでいいのです。それだけでも、その先の1日がまったく違うものになります
。ちょっとの努力を1週間続けてみてください。余裕が生まれれば、周りのいろいろなものが目に入り、世界が広がったような気になるものです。ひょっとしたら、世界がこれまでとは遣って見えるかもしれません。

目覚めてもすぐに体は動かない

「朝に弱い」人は、ぎりぎりの時間まで寝ていますが、起きたとなったら、びっくりするほどの猛スピードで身じたくをし、家を出るという特技を持っています。
それはそれで立派なことですが、残念ながら、身じたくはできても、体の中はそんなにすぐには動けないのです。

まず、胃腸です。起きて牛乳などを飲み、朝食を食べ終わったころ、やっとウンチがしたくなります。しかし、起きてすぐに家を飛び出したのでは、胃腸が活発に動き出すのは会社に着くころです。出かける前に牛乳を飲んだのはいいけれど、電車の中でトイレに行きたくなり、冷や汗をかいたという詰もあります。

睡眠と腸の働き | 眠りの悩みを解消しよう!によると夕食を早く済ませ空腹で眠るのがベストだそうです。また、夜遅い時間に食べている人の腸は汚れがちだそうですので、こういったことも朝、起きられない要因になるかもしれません。

脳や体の各器官にしても、起きてすぐに活発に動き出すわけではありません。シャワーを浴びたり、朝食を食べたりという刺激によって、少しずつ動き始めるのです。できれば、出かける1時間前には起きたいものです。この1時間で、体は万全の準備を整えることができるのです。