朝に弱いことが原因のトラブル

なぜ、朝早く起きるのか?

昔は、「朝に弱い」といえば、単なる怠け痛くらいに思われていました。現在では、多くの人が、さまざまな理由によって朝起きることに苦労しているようです。

それは、文明が進歩し、昼夜の別のない生活ができるようになったために、本来人間が持っている『夜に眠って朝に目覚める』という体のリズムがおかしくなってきているせいだという皮肉な理由もあります。

もともとは陽が昇ると起きて陽が沈むと眠っていたのですから、そのころから比べれば、現在は4~5時間は時間のずれた生活をしているともいえます。それならば、あと1時間眠ったとしても、人間本来のリズムが狂うこともないだろう、せめて1時間、いや、30分でいいから眠っていられればと思っている人も多いはずです。

このように悩んでいる人が多いのに、なぜ朝早く起きなければいけないのでしょうか。この素朴な疑問の答えは簡単です。社会のしくみが午前9時から午後5時までという時間帯を中心に動くようになっているからです。
これがもし午前11時から午後7時だとしたら、いつもより一時間遅く起きても、朝食をすませてから余裕を持って出勤できるでしょう。

日本では、郵便局、市役所などの公共機関、銀行、デパート、さまざまな会社など、ほとんどの機関が稼働するのは、午前9時から午後5時、遅くとも午後7時のあいだです。そして、午後5時以降に、居酒屋やスナック、クラブなどの遊びやくつろぎのエリアが始動します。昔のTV-CMに「5時まで男」と「5時から男」というのがありましたが、まさに午後5時を区切りに、活動の時間帯とくつろぎの時間帯とが分かれるという社会なのです。

体のリズムに合った生活をするためだけなら、毎朝7時ではなく8時に起きてもいいでしょう。にもかかわらず、7時に起きなくてはならないのは、9時には会社に出勤しなければならないからです。つまり、社会のしくみを優先させた生活を強いられていて、このような社会で生きていくには、朝早く起きられないとさまざまな問題が生じます。遅刻ばかりしていれば信用を失うし、午前中ぼーっとしていては仕事の能率が上がりません。したがって、社会生活に適応できない人とみなされてしまいます。そもそも、本人が毎朝つらい思いをしなければならないなど、それだけでもつまらない話です。そのうえ、朝起きられないというだけで、さまざまな損をしてしまうことになるのです。

朝リラックスする時間がないので便秘になった

朝起きてから何分くらいで家を出ているでしょうか?できることなら、シャワーを浴びて朝食をとり、そのあと少しゆっくりしてから出かけたいと思いませんか。それなのに、あと5分でいいから眠っていたい…という気持ちについつい負けてしまい、結局、ぎりぎりの時間に飛び起きて、急いで顔を洗って家を飛び出すという生活パターンの人も多いのではないでしょうか。

たしかに遅刻さえしなければ、会社では文句をいわれることもないでしょう。しかし、朝のリラックスタイムがないということは、体のバランスにはとてもよくないのです。

その理由のひとつに便秘になりやすいことがあります。みなさんも経験からおわかりかもしれませんが、人間が便意を催すのは、たいてい朝です。食事は1日に3度とるのに、どうして時間のない朝にトイレに行きたくなるのだろうと思いませんか? ロに入った食べ物が24時間かかってウンチになるとしたら、夕食後にトイレタイムが来てもいいような気もしますが、朝に便意を催すのには、きちんとした理由があるのです。

朝目覚めるのは、意識だけではありません。体のあらゆる器官についても同様です。眠っているあいだ、体はすっかり活動を停止しているわけではないのですが、かなりトーンダウンしています。寝る前にお腹いっぱい食べると翌朝胃が重くもたれてしまうのは、眠っているあいだは胃や腸が起きているときのような活動をしていないからです。そのため食べたものを翌朝までに消化しきれず胃に残しているので、胃が重いという症状になります。

朝起きると意識とともに体が目覚め、さぁ朝だ… とばかりに胃腸も活動を始めます。しかし、寝起きがいい人と悪い人がいるように、胃腸もいつも元気よく目覚めるとは限りません。起きてからしばらくは、ぼーっとしていることもあるのです。便秘には寝起きに冷たい水や牛乳を飲むといいというのは、この刺激で胃腸を目覚めさせることができるからです。

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排便をがまんすると、便意のセンサーが鈍ってしまう

便意というのは、直腸に便が入ると催すしくみになっています。ですから、朝起きて、胃や腸が目覚めていれば、自然とトイレに行きたくなるはずです。
しかし、目覚まし時計で飛び起き、シャワーを浴びる時間もなく、軽く洗面だけして家を飛び出すような生活では、「胃腸の目覚まし」代わりの牛乳一杯を飲む時間もありません。せめて駅で缶コーヒーでもと思っても、時間がぎりぎりだから、到着した電車に走って乗り込むような始末。会社にたどり着いてやっとひと息つき、そのときに飲む一杯のお茶やコーヒーが、最初の飲み物ということも十分考えられます。

したがって、朝ぎりぎりの時間に起きる人は、「さあ仕事が始まるぞ」というころになってから、胃や腸がやっと目を覚まして動き出すので、トイレに行きたくなるのです。

かといって、会社で排便はしにくいものです。特に女性の場合、多少の便意ならがまんしてしまう人も少なくありません。そして、それが便秘の元になります。わたしたちは、通常1日に1回は排便します。しかし、そうしてがまんしているうちに、便意のセンサーが鈍ってしまい、便が直腸に下がってきても便意を感じにくくなります。

そのうち便が硬くて出にくくなり、トイレで30分たっても出ないというような状態になってしまいます。さらに、何とか出たとしても、ころころした硬い便が数個だけで、その奥にある便までは出ないのです。

便が硬くなるのは、便意のセンサーが鈍ってきていて、軟らかい便がころころの硬い便になるまで感じないからです。対症療法として、便秘薬を飲んだり、浣腸をしたりする人も多いでしょう。
ですが、腸のセンサーがころころの硬い便になるまで感じないほど鈍っているのですから、そのときは便が出ても、また次からは硬くならないと出ないという状態が続きます。

快食、快眠、快便とはよくいったもので、便秘というのは本当に不快です。不快なだけならまだいいのですが、考えている以上に体のバランスを崩してもいます。

特に女性は肌に吹き出物などが出て、新たな悩みが生まれます。ぎりぎりの時間に起きて会社に駆け込むような人は、30分でも早く起き、トイレをすませてから出社することをおすすめします。朝のトイレタイムを持てるか持てないかで、毎日の心身の快適度がまったく違うのです。それが実感できるようになると、毎日便秘で苦しむよりは、少々無理をしてでも朝起きることのほうが、ずっと楽だと思うに違いありません。

朝、起きられない人は太る

朝が苦手だという人は、1分でも余分に眠っていたいのですから、家を出るのはぎりぎりで、朝食を食べずに出社するという人がほとんどでしょう。また、大学生やフリーターなど、時間が自由になる人であっても、寝起きの悪い人は胃腸の寝起きも悪く、起きてすぐにはものを食べられないという人が多いのです。

社会人なら朝食を抜けば大抵は昼休みまで何も食べられませんから、朝起きて4時間以上何もお腹に入れないことになります。お昼になればさすがにお腹が空くけれど、たった1時間の昼休みで、たらふくお腹をいっぱいにしようという人はいないでしょう。近くのレストランのランチ、あるいはおにぎりやサンドイッチで簡単にすませてしまいます。
それでも、とりあえず1回目の食事ですから、そこそこお腹がいっぱいになります。そして仕事に戻り、3時にコーヒータイムでお菓子を食べるくらいで夕食を迎えます。問題はそのあとです。
まっすぐ帰宅して家で夕食を食べる場合、その日は会社でお昼を1食しか食べていないのですから、かき込むようにがつがつと食べてしまいます。これでは、1 日の食事の中で夕食の比重が重くなってしまいます。

しかも、お腹はいっばいなのに、心の空腹感が消えず、しばらくするとお菓子に手が伸びることもあるでしょう。帰宅の前に同僚の何人かと飲みに行った場合でも、さんざん飲んで食べたのに、つい帰りにラーメンを…ということにもなります。

このようにバランスの悪い食生活は、時間が自由になる人であれば、もっと顕著に現れます。お昼に起きて、3時ごろ昼食。夕飯時には軽く食べておいて、夜中に夜食というパターンです。人間の体はリズムを持って生活しているのですから、朝起きるのが遅かったり朝食を食べ損ねたりすれば、そのぶん、通常のリズムより後ろにずれていることになります。

ですから、夜遅くなり、本来ならもう胃腸も休息する時間なのに、お腹が空くのです。ここで夜食をとるかどうかが、女性にとっての悩みの種となるはずです。女性の方ならご存じでしょうが、太る原因の最たるものは、「遅い時間に食べる」ことです。モデルクラブなどでは、食事の制限はしなくても、夜8時を過ぎたら絶対に何も食べてはいけないと指導しているところもあるほどです。
逆にいうと、朝早く飛び起き、昼間めいっばい活動すれば、夜更かしして遅い時間に食事をとることがなくなり、少々のダイエットより効果があるかもしれません。

生理不順の原因は不規則な睡眠時間が原因

生理不順というと、すぐに頭に浮かぶのは、ホルモンの異常や婦人科系のトラブルです。しかし、案外身近にも原因があるのです。
人間の体は、サーカディアンリズムという生体のリズムにのっとって活動しています。このリズムを刻んでいるのが体内時計ですが、体内時計は朝が来て夜が来て1日というように、朝の訪れを感知することで1日がスタートしたものと数えます。

そして、女性の生理は、この1日が約28回来ることで1つの周期を刻んでいます。ですから、週末だからと徹夜して朝に眠り、夕方起き出して朝方まで眠れず、次の日はデートで昼には起きて…という不規則な生活では、体内時計はいつが朝でいつが夜なのかわからなくなり、実際には朝が来て夜が来て1日たっているのに、体内時計では1日をカウントしないということになります。
そうなると、体内時計が数える日数と実際の日数のあいだに大きなずれが生じ、生理の周期もずれてしまうのです。

最近の若い女性に生理不順の人が多いのも、不規則な生活が原因という場合が多いかもしれません。多少、生理が不順だったとしても、体への影響はとりたててないでしょう。けれども、生理の周期が狂うということは、女性の体の機能に狂いが生じているということなのです。
逆に、そのせいでホルモンや自律神経に影響しないとも限りません。痛いとか、熱があるという形で現れなくとも、体のバランスが崩れれば、体の各器官にさまざまな影響があります。

こんなところからも、眠りと覚醒のリズムにのっとり、朝起きて夜眠るというのが、実はどんなに重要なことかおわかりいただけると思います。

毎日遅刻すれすれ、通勤時のいらいらが思わぬストレスに

遅刻すれすれの時間まで眠っている人は、起きてから猛スピードで身じたくをして脱兎のごとく家を飛び出し、会社にすべり込むという毎日です。たまにであれば、「あー間に合った」と胸をなでおろせばいいのですが、毎日がこんなパターンでは、精神的にもかなりの負担がかかります。

毎日のことですから、この電車ならぎりぎりOK、次の電車なら遅刻すれすれと、電車の時間はわかっているという人もいるかもしれません。しかし、バスなら道路の混み具合によって数分の誤差が出ます。

また、晴れや雨の日など天気によって、歩くスピードにも多少の差が出るでしょう。とにかくぎりぎりですから、少しの誤差も許されないだけに、前をゆっくり歩いている人がいれば先に進めず、いらいらするでしょう。

人ごみを走り抜けようと思えば、人にぶつかりそうになり、前を見てさっさと歩けなどといいたくなったことはありませんか。遅刻すれすれまで眠っていると、会社に着くまでのこの間、ずっと、時計とにらめっこで、いらいらした気分で過ごすことになります。

この毎朝のいらいら気分だけでも、積もり積もれば大きなストレスになります。通勤=「いらいら気分」ですから、寝坊の自分を棚に上げ、会社に行くのが嫌になるという人もいるくらいです。こうした朝からのいらいら気分は、その場の不快感だけでなく、仕事にも影響します。

息を切って駆けつけた状態では、すぐに頭は働きません。何をするときでも同じことですが、精神を落ち着かせるまでには時間が必要です。
ぎりぎりに駆け込んでいては、少なくとも、そのぶんロスタイムになります。到着してすぐに会議が始まるときなど、なおさらです。精神を落ち着けるのに時間がかかり、なかなかふだんの自分の頭に戻りません。
結局、いいアイデアも出ず、会議でもさえない発言しかできずに終わることになります。朝起きるのが人より遅いということは、1日の始まりで出遅れているのです。

朝のいらいらが仕事の能率を下げる

成績はたいへん優秀で頭もよく、第一志望の大手メーカーに就職も決まりました。その彼のたった1つの欠点が、「朝に弱い」ことだったのです。
昔から夜型人間で、朝起きるのがものすごくつらいというのです。朝はぎりぎりの時間まで寝て、親御さんに起こされて必死に起き、会社に駆け込むという生活が続きました。
社会人としての責任もあり、遅刻はしないのですが、毎日がぎりぎりセーフなのです。それでも入社した最初のうちは、はりきって仕事をするということで、高い評価も受けていました。

しかし、そのうちに同期が1人、2人と新しいプロジェクトなどに抜擢されていくのを悔しい思いで見守ることが多くなりました。そして、ある日彼は、それは自分が人より朝出遅れているせいだと気づいたのだといいます。

「11時くらいまでボーッとしていて、頭がさえないんですよ。会議に出ても集中できないし、積極的に仕事に取り組む気が起きないんです。それで、昼休みが終わってしばらくすると、やっと自分のペースになったなって思うんだけど、そこから仕事に馬力をかけても、すぐ退社時間になっちゃうでしょう。

1人の作業なら残業って手もあるけど、上司や相手先のあることだと、あくる日に延びちゃうわけです。これだと仕事の能率も悪くなるし、スタートのタイミングが遅れちゃってるからすべてが後手にまわっちゃって、上司に催促されたりして…。

できないやつって思われちゃったみたいです」彼の場合は、そんな自分に嫌気がさし、どんなにつらくても朝は余裕を持って出社するように心がけました。すると、仕事の能率が上がるのに自分でも驚いたといいます。

「今でも朝はつらいですけど、前よりはだいぶ楽に起きられるようになりました。何事にも慣れってあるんですね」今ではそういって頭をかきます。習慣をつけることで、朝起きることは非常に楽になります。急な坂も、毎日上っていれば苦しさが半減するのと同じことです。朝がつらいのも、毎日早起きしていれば、少しずつ楽になるでしょう。

努力だけでは解決しない眠りのトラブル

「仮面うつ病」が眠りを妨げている

「仮面うつ病」という病名を耳にしたことがありますか?この病気はうつ病と同じように心の病ではあるのですが、症状はうつ病とは異なっており、本人も自覚しにくい病気です。
うつ病というものは、その名のとおり、うつ症状が現れます。いわゆる、気分が重く、沈みがちで、無気力になり、何事もくよくよと悪いほうへ悪いほうへと考えてしまいがちになるのです。

うつ状態とは、生きるためのエネルギーが落ち込んでしまった状態、つまり生きる力がダウンして、さらに悪化すると自殺願望が強くなるのですから、ばかにできない病気です。とりたてて奇怪な行動をとるようなことはありませんが、何となく元気がないなど、本人はもちろん、家族や職場の人なども注意深く観察していれば、ある階で「ちょっとおかしいな」と気づくことができます。

ところが、この仮面うつ病は、人付き合いが悪くなって元気がなくなったといった、いわゆるうつ病らしい症状が精神面には出ません。だるくて朝起きられないといった、体の症状となって現れてくるのです。うつ病らしい精神症状が表に出ず、身体症状によって隠されてしまうことから、仮面をかぶったうつ病= 「仮面うつ病」といわれているのです。

本人にも心が病んでいるといった自覚症状がありません。自覚しないどころか、自分が心の病になるなんて考えもしないのです。本当はストレスが徐々にたまり、SOSが出ているのに、社会で働く以上、多少の悩みは当然だとばかりに、突っ走っている人も多いのです。
病気は、特に20代のはりきって仕事をしようという人たちに急増しています。

眠れない、起きられないは「仮面うつ」の初期症状

仮面うつ病の代表的な症状は、体がだるくて、なかなか朝起きる気がしないというものです。午前中はぼーっととしていて、夕方くらいになってやっと元気が出てくるといった具合です。
朝起きるのが大好きで、いつもすっきりと目覚めている人はあまりいません。そのため、仮面うつ病であっても、自分は朝が弱いんだくらいにしか思わないのです。

このほかに、寝つきが悪いという症状もあります。今までは横になったら1分もたたないうちに寝息をたてていたような人が、1一時間たっても2時間たっても眠れなくなるのです。
しかも、なかなか寝つけないばかりか、やっと眠れたと思ったら、ちょっとした物音で目が覚めてしまいます。また、明け方やっと眠れたかと思ったら、今奮闘している仕事がなかなかうまくいかないなど、気がかりなことが出てくる現実的な夢を見たりします。当然、睡眠時間は少なくなり、ぐつすりぐっすり眠っているわけではないので、睡眠の質も悪くなります。

朝起きられないのはもちろん、起きるとずいぶん疲れた感じで、午前中はどうしようもなく体がだるいという悪循環が起きます。この状態がさらに進めば、頭が重く、気分がすっきりしないことが多くなります。

このほかに、寝つきが悪いという症状もあります。今までは横になったら1分もたたないうちに寝息をたてていたような人が、1時間たっても2時間たっても眠れなくなるのです。しかも、なかなか寝つけないばかりか、やっと眠れたと思ったら、ちょっとした物音で目が覚めてしまいます。また、明け方やっと眠れたかと思ったら、今奮闘している仕事がなかなかうまくいかないなど、気がかりなことが出てくる現実的な夢を見たりします。

当然、睡眠時間は少なくなり、ぐっすり眠っているわけではないので、睡眠の質も悪くなります。朝起きられないのはもちろん、起きるとずいぶん疲れた感じで、午前中はどうしようもなく体がだるいという悪循環が起きます。この状態がさらに進めば、頭が重く、気分がすっきりしないことが多くなります。

「睡眠障害である」という認識が必要

初期の仮面うつ病は、重大な病気というよりは、風邪程度のものと考えてください。ちょっと喉が痛いとか、悪寒がするといった症状の代わりに、朝起きられない、夜寝つけない、そのためにだるくて集中力がないといった症状が出ているのです。

ですから、たまには息抜きも必要で、休み時間にスポーツをしたり、飲みに行ってカラオケで盛り上がったりして発散すれば、自分でも気がつかないうちに治っていることもあります。

朝起きられないということが病気の症状だとは、だれも思いません。まして、仮面うつ病になるような人は、「具合が悪いから今日も休んじゃおう」というのんきなタイプというよりは、がんばり屋の人が多いので、自分の生活態度が悪いとか、自我が弱くて自分に負けてしまっているんだというように、それこそ自分を責めてしまいます。

しかし、それは逆効果なのです。こういう人たちは、こんな大事なときに体調が悪いなんていっていられない。病は気からだと、自分にムチ打って仕事に精を出します。すると、さらに睡眠不足がつのり、集中力もなくなり、体がだるくて仕方ありません。やがては食欲もなくなり、体重も減り始めます。ここまでくるとさすがに、少し体の具合がおかしいんじゃないかという気になり、病院を訪れます。

当然、精神科などは思いもよらず、内科で診察を受けるでしょう。体がだるくなる病気の代表的なものは肝臓障害ですから、まず肝機能検査をするように診断されます。
しかし、原因はストレスですから、肝臓に異常があるはずもありません。「ちょっと疲れがたまっているんでしょう。できるだけゆっくり休養をとったほうがいいですね」と、アドバイスされて終わりです。

原因であるストレスを解消しなくては、少しも症状はおさまらないでしょう。めい人は、体に不調があると、心が滅入るものです。まして、病名もはっきりしないとなれば、いろいろな心配も頭を駆けめぐるでしょう。そして、さらにストレスを生み、どんどん悪化するという悪循環を招きます。

では、どうすればいいのか。仮面うつ病とはストレスによる睡眠障害だと、しっかり認識することです。そのうえで、医師のもとを訪ねてください、
は、抗うつ剤も非常に進歩しています。数週間薬を飲めば、また心地よい睡眠が戻ってくるでしょう。朝起きられないという、一見怠惰に見える状態であっても、睡眠障害がその要因になっている場合があります。
精神の病気だと深刻に考えず、相談でもするつ鴇りで気軽に来院してください。仮面うつ病は、うつ病の中ではごく初期の段階なので、重くならないうちに治しておくことが大切です。

不眠症のつもりが実は「仮面うつ病」だった

いつものようにふとんに入ったのに、いつまでたっても眠気が襲ってこない。眠ろうと思えば思うほど、どんどん眠りから遠ざかり、結局まんじりともしないで朝を迎える。そして、このままじゃ体がもたないと病院に行く。あるいは、ある日突然、夜眠れなくなってしまい、明け方うとうとするだけで朝を迎える。これでは疲れがとれるはずもなく、朝の目覚めはよくないし、体もだるくなり、ついには体調もおかしくなって、医者に相談する。これが、いわゆる「不眠症」です。

原因はストレスに起因することが多いのですが、人によって本当にさまざまです。たとえば、異例のスピードで突然管理職に抜擢され、若手との狭間でどうしていいかわからず、そんなことが頭をもたげてというように、具体的な心配事を抱えている場合もあれば、本人にはまったく思いあたることがないというケースも少なくありません。

ふっと星空を見たときに、「自分はなんて小さな存在なんだろう。この大宇宙に比べたら、眠れるとか眠れないなんて小さなことだ」と思い、すっかりよくなったという人もいるくらいです。
一方、自分は不眠症じゃないかと相談にみえる方のうち、「なぜだか自分でもわからないんですけど、どうも寝つきが悪くて、朝方まで眠れないこともあるんです」というような人が、実は仮面うつ病というケースが多いのです。

仮面うつ病は、精神的には本人に自覚がないのが特徴です。眠れないからと、心配されるほとんどの人が仮面うつ病です。仮面うつ病の場合、眠れないと翌朝つらいからと、お酒を飲んだり、睡眠薬を飲んだりしても、少しもよくなりません。数日間も眠れない日が続いたときは、不眠症ではなく、仮面うつ病を疑ってみるほうがよいでしょう。

専業主婦に多い、もう1つの不眠症

「夜なかなか寝つけなくて、不眠症じゃないか」と相談にみえる方の中で、もう1つのグループは、専業主婦の方々です。この場合、実は昼間のあいている時間に眠っているから夜眠れないという人がほとんどなのです。

子供も学校に通うようになり、便利な家電製品のおかげで家事の時間も短縮され、昼の時間に余裕ができた。そこでついうとうとしてしまい、夜眠れなくなるというパターンです。
毎日忙しくて睡眠時間が足りないときでも、昼間少しでも仮眠をとるとずいぶん楽になったように感じることがあります。たった1,2時間の昼寝で、疲れがすっかりとれてしまうこともあります。けれども、こんな生活では、夜は熟睡できません。

朝は体が重くて起きるのがひと苦労だと、悩んだ末に病院を受診されます。何日も心地よい眠りが得られず、精神的にも不安定な状態になっていますから、昼寝をやめたとたんに夜はぐっすり眠れるようになる… かといえば、必ずしもそうではありません。今夜も眠れないんじゃないか?と意識すれば、睡魔はどんどん遠ざかっていきます。

こういう場合は、昼間に軽いスポーツやヨガなどを始めてみるもよし、生活の中で緊張している時間とリラックスしている時間のめりはりをつけることも大切です。そうすれば、くつろぐべき時間には自然と眠りが訪れ、朝もすっきり目覚めるようになります。
いずれにしろ、不眠症の場合は、眠るということを意識し過ぎないことです。1日、2日眠れなくたって死ぬわけじゃあるまいし… といった大きな気持ちになることが、実は大事なのです。

太っていていぴきが大きい人に多い「夜間無呼吸症候群」

「夜間無呼吸症候群」は、なじみのない痛名かもしれませんが、睡眠障害の1つです。これはその名のとおり、夜、眠っているあいだに、一瞬呼吸が止まってしまうという恐ろしい病気です。「睡眠時無呼吸症候群」とも呼ばれます。

どうも朝起きるのがつらい、昼間でもどうしようもない眠気に襲われるという人のうち、太っていていびきが大きい人は、まず、この病気を疑ってみてくださすもうい。というのも、この病気にかかっている人のほとんどは、お相撲さんのように太っていて、ガーッガと大きないびきをかく人だからです。

年齢には関係ありません。実際、20代のお相撲さんで、この病気にかかっている人も多いのです。そして全員に共通しているのが、まさかそんな病気だとは夢にも思っていない点です。
睡眠時無呼吸症候群はこちら

肥満が原因で寝ているあいだに呼吸が止まる

この病気の原因は、極度の肥満です。肥満のために喉の周辺にも肉がたくさんついてしまい、舌の根っこの部分の筋肉がすっかりゆるんでしまっているのです。
立っているときは問題ありませんが、寝た姿勢になると、舌や舌の根っこのゆるんだ筋肉が気管に落ち込んでしまいます。それがじゃまになって、気管を通っているて吐き出される呼気がうまく外に出ることができず、それでも狭いところ一を無理やり通ろうとするので、抵抗音がいびきとなって出てくるのです。

ところが、寝ているあいだに何度か、気管がゆるんだ筋肉に完全にさえぎられ、呼気が外へ出られなくなってしまうことがあります。ほんの30秒か1分ことですが、そのために呼吸が止まり、脳に酸素が届かなくなるので、質のせ眠りが妨害されます。

その結果、睡眠時間は長いのに睡眠不足の状態となり、仕事中に猛烈な眠気に襲われ、居眠りをしてしまうわけです。太っていていびきをかく人は、ガッすごいいびきをかいていたのに、一瞬パタッとい息が止まることがないかどうか、家族の方に聞いてみてください。
この病気の場合も、意思の強さだけではどうしようもありませんが、きち′した治療が必要ですから、不安な方には病院で相談することをおすすめします。

起きる意欲も重要

20代に急増する「消極的出社拒否症」

よく、年をとると早く目が覚めるなどといいますが、本当はだれでも、眠っていられるのなら、ぬくぬくとしたふとんにくるまっていたいのではないでしょうか。
特に冬場などは、目覚まし時計が鳴り、もう起きなくてはいけないのに、あと5分、10分…と、ぎりぎりまで横になっていた経験を持つ人も多いでしょう。

にもかかわらず、なぜ起きなければならないのかといえば、学校や会社へ行かなければならなかったり、映画やゴルフに行く約束があったりという「理由」があるからです。ところが、最近は、ずるずると寝坊してそのまま学校を休んでしまったり、「もう遅刻だから今日はいいや」と会社を休んでしまう若者が増えています。

それぞれに起きたくない理由が、あるにはあるのです。しかし、それは、外が寒そうだとか、昨日飲み過ぎて体がだるいとか、その日嫌いな科目があるといった、ささいな理由の場合がほとんどです。

また、嫌な上司がいてあいつとは会いたくない、先輩にいじめられる、自分の希望以外の部署に異動させられたなど、会社に行きたくない理由がある場合でも、それをはっきりと自覚しているわけではなく、自分でもよくわからないのだけれども、何となく行きたくないという気分に包まれているケースが増えています。

そのために、もう会社を辞めよう、自分は悪くないんだから正々堂々と闘おうといった主体的な態度に出ることはありません。そこまでの強い気持ちはないのです。嫌なことと闘う気力もなく、とりあえず無意識に逃げてしまっているのでしょう。

黙っていてもバッと目が覚める人ばかりではありません。目覚まし時計で起き、「よし、起きるぞ」と自分を励ましてふとんから出るという場合も多いはずです。
そのとき、楽しいことがあれば起きる意欲は強まり、自分でも自覚できないちょっとしたことが引き金になって、起きる気力がなくなることもあるのです。

無気力は起きる意欲をそぎ落とす

ところが、最近は、嫌なことがあるわけでもないのに、何となく起きられないという人が増えています。会社に行くことに、わざわざ気合いを入れてあたたかいふとんから出るほどの価値を見出していないということです。上司が特別に嫌なわけでもないし、友だちもそこそこいて、行けば行ったで楽しいけれど、わざわざ行くほどの意味を持たない。
かといってほかの仕事をしたいとか、何かやりたいことがあるわけでもない。つまり、人生に生きがいを見出していないのではないでしょうか。仮に、2~3日寝坊して、会社を休むとします。当然上司からは、「何やってるんだ、いいかげんにしなさい」「そんな状態じゃなく、辞めるか、しっかり出てくるかはっきりしなさい」というような電話がかかってくるはずです。上司の立場からいえば、このままじゃ会社を辞めさせられると心配になって出勤してくる、という心積もりがあります。

でも、本人はそういわれると、ますます行きたくなくなるのです。「そんなふうにいわれちゃうんだったら、会社辞めちゃおうかな…」というように、仕事に関しても、生きることに関しても、そんな程度の執着しか持っていません。

これが、若者たちに蔓延しているこわい現象です。これまでずっと、受験戦争の中で闘う小学生、闘う中学生をやってきたのに、会社に入ってもまた同じように闘わなければならないと思うと、途方もなく疲れる気分になるのでしょうか。問題なのは、本人もそこまでは気づいていないことです。
思いあたる嫌なことは特にないわけですから、朝きちんと起きられれば、もっと仕事ができるのに…と思っている人もたくさんいます。みなさん一様に、朝起きられないとか、何だか会社に行く気がしないという理由で訪ねてくるのですが、どこを診ても病気ではないし、薬を使ってもいっこうによくならないのです。

自分の意思で起きられない子供たち

最近は、小学生、中学生にも、朝に弱く、午前中はボーッとしているという子供たちが増えつつあるといいます。夜遅くまで塾に通い、家に帰っても、勉強してから寝るというような毎日を送っている子供も多いらしく、考えてみると、無理のない話のようにも思えます。

母親も、子供が疲れているだろうと気遣い、一度、起こして起きなくとも叱るようなことはしません。何度も根気よく声をかけ、遅刻寸前にしぶしぶ起きても、何とか学校に間に合っているんだからと許してしまうおかあさんも多いと思います。

こうして、小さいころから「朝に弱い」生活が始まるわけです。しかし、ちょつと考えてみてください。先ほど、「させられる人生」「してあげる人生」を送ってきた人は、人生に生きがいを見出していない…という話をしましたが、こうして、朝起きるまで起こしてあげるのが当たり前というところから、子供たちの「させられる人生」「してあげる人生」が始まるのです。今では、戦後の二人っ子世代が親になる時代です。すっかり平和で豊かになった世の中で、その子供たちは、愛情過多による過保護、過干渉で育てられることが多いようです。

そのせいで、自我の形成が遅れ、大人になっても自分で自分を抑制できない人が増えています。そして、朝起きられないなどという程度にとどまらず、過食症や拒食症といった新しい病気すら出現することになりました。
こうして考えていくと、朝、自分の意思で起きるということが、子供たちにとってどれほど重要なことかがおわかりでしょう。いきなり自分で起きなさいというのが無理なら、たとえば、毎朝起こすとき、一度起こしたらもう遅刻しても知らないという態度をとるなど、なぜ起きなければいけないのかを子供たちに考えさせてみるのもよいでしょう。

遅刻したくないとか、友だちを待たせることになるとか、自分の理由が見つかれば、つらくても起きるようになるはずです。それで1,2度失敗して遅刻したところで、自分から起きられるようになることのほうが大切ではないでしょうか。そういう意味では、なぜ朝起きるのか、なぜその高校に入りたいのか、何をするにも、だれかのためにしてあげるとか、だれかにやらされているのではなく、自分の意思でやっているのだという自覚を持たせることが大切だと思います。

本人も気づかない自我の弱さ

「わたしは低血圧だから、朝が苦手」というのは、すっかり決まり文句になっています。しかし、「低血圧だから朝が弱い」という人たちの中には、次のようなグループもあります。それは、自分の眠りとか、もっと眠りたいという気持ちをコントロールするだけの自我の強さを持っていない人たちです。
これも本人は気づいていない場合が多いのです。自分の人生だもの、朝起きようと寝ようと勝手なはずで、自我の話なんて持ち込まないでくれと、少々ムッとする人がいるかもしれません。しかし、この場合は、本当に寝ることが大好きで、自分の意思で寝ていたいから寝るという積極的な人の話ではないのです。本当はもっと余裕を持って家を出たいのに、どうして自分は朝が弱くて、いつもぎりぎりにしか起きられないんだろうと、ぼやいているような人の話です。

たとえば、おかあさんたちは、子供にお弁当を作ってあげなければいけないから、本当は寝ていたいけれども、起きなければならないと思って起きます。このほかにも、大切な会議があるから、自分が行かなければ店がオープンしないからしったと、一種の使命感とか役割意識が、もっと寝ていたいという自分を叱咤激励して起こすわけです。

朝早く日が覚める人が、葛藤もなく起きているかというと、そうではありません。一方、自我が弱い人たちは、遅刻しないように眠いのをがまんして朝起きるとか、おいしいものが食べたいけれど給料日前だからがまんするなどといった、自分の欲望をコントロールする訓練ができていないともいえます。

「もっと寝ていたい」気分と「起きなきやいけない」気分との闘いで、常に、「起きなきやいけない」気分が負けてしまっているということです。「自我が弱い」というと大げさですが、それは自分の中のささいな部分だったりもするのです。だんだんと仕事を覚え、部下もでき、責任感が出て、もっとしっかりしなくちゃと自覚することで、「朝に弱い」のが治ったという人もいるくらいですから。そういえば? と思いあたる人はいないでしょうか。