朝に弱い

熟眠を妨げる要因(お酒、カフェイン、睡眠導入剤)

お酒はたくさん飲むとNG

「寝酒」という言葉があるように、昔からお酒は睡眠を誘発するイメージが強いようです。確かにお酒を飲むと眠くなります。赤ちょうちんを見ると反射的に気持ちがうずうずしてしまうという酒飲みがいます。お酒を抜くとなかなか眠れない習慣がついてしまっています。

簡潔に言うと、寝酒(ナイトキャップ)の注意点にまとめてありますが、ここでは寝酒のデメリットについても詳しく見ていきたいと思います。

寝る前にちびちびとお酒を飲み、ポーっとしたころ目を閉じると、何ともいえない心地よい眠りに誘われるという人もいます。たしかに、アルコールには、脳をぼんやりさせる作用があります。これによって、眠くなったと感じるわけです。

しかし、飲み過ぎると、これがかえって逆効果になります。飲み過ぎによって神経が麻痔すると、ノンレム睡眠とレム睡眠のセットでまわっている通常の眠りのバランスが崩れ、結果として眠りが浅くなる傾向があるからです。

一時的には、非常に深い睡眠が得られたような気がします。ですが、通常のリズムではありませんから、まだ起きる時間でもないのに、突然目が覚めたりするのです。

また、お酒には水分を奪うという性質があります。酔っていい気持ちで帰って、そのままぐっすり寝込んでしまったのに、突然夜中に喉が渇いて目覚め、がぶがぶと冷たい水を飲んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。

一時的に気持ちよく眠りについても、こうして夜中に目覚めてしまっては、眠りが分断され、快適な眠りは得られません。そのうえ、度を越した酒量を摂取した翌朝は2日酔いも重なりますから、よけいに起き上がることがつらくなります。ただでさえ「朝に弱い」のに、二日酔いのつらさが加わったのでは、よい目覚めが期待できるはずもありません。

アルコールは睡眠薬ではない!

お酒は寝つきをよくする効果はあるけれど、少量以上はかえって害になると考えたほうが無難です。それでは、少量とはどのくらいかといわれると、これは千差万別です。どのくらい飲めばどのくらい酔うかというのは、体内にあるアルコールの分解酵素の量によって決まるのですが、その分解酵素の量は人によって違います。

ですから、寝る前にブランデーを1杯というように、ちょっといい気持ちになって眠りやすくなったかな?という程度におさえておくほうが得策でしょう。

ただ、アルコールというのは、毎日飲んでいると、だんだん同じ量では酔わなくなります。つまり、同じ量では以前のいい気持ちが得られなくなってくるのです。

「いい気持ち」を得るためには、飲む量を増やすことになります。これを繰り返していると、体によくないばかりか、飲まないと眠れなくなってしまうのです。この状態がどんどん高じると、「アルコール依存症」予備軍にもなりかねません。アルコールは、眠るための薬ではないという自覚が大切です。

お酒というのは本来、楽しみのためにあるものです。風呂上がりやスポーツのさかなあとのビール、おいしい肴で飲む日本酒など、アルコールならではの味わいもあります。ぼんやりとバーで飲む1杯のウイスキー、仲間とわいわい騒ぎながら飲むチューハイが、違う世界に運んでくれることもあるでしょう。

悩みを抱えていると快適な眠りは得られませんから、お酒で発散するのは有効だともいえます。しかし、眠りという点だけで考えれば、多量のお酒はよい眠りを作り出すことはできないのです。

寝る前に脳を興書させると眠れない

眠っているときと起きているときとでは、脳の働きは異なります。眠っているときは、外界からの刺激を受けても反応しません。ですから、声をかけても目が覚めないのですが、スイッチを切り換えるように、脳が刺激に反応しなくなるわけではありません。

目が覚めてもしばらくはぼんやりしているように、眠りにつくあいだも、だんだんと脳が刺激を感じられなくなり、ぼんやりして、最後には声をかけても気づかないほどの深い眠りに入るわけです。ですから、脳がそろそろ眠る時間だと刺激に鈍感になってきたときに、急に興奮するようなことが起これば、脳は驚いて身構え、またバッと目が覚めてしまうということになります。

「興奮する」というと、地震が来て飛び起きるといった状況をイメージしがちですが、深夜テレビでおもしろい番組を観るとか、どきどきしながら推理小説を読むという刺激でも、十分に脳は興奮してしまいます。
明日の会議のことが気になるといった心配事も、逆に明日のデートが楽しみだといったうれしいことも、脳には強烈な刺激になってしまうのです。そ

ろそろ寝る時間だというときには、テレビを消し、本を読むならちょっと読んだらあきてしまうような内容のものにしたほうがいいかもしれません。

また、体が疲れれば快適な眠りが得られるだろうと、寝る前にジョギングをする人がいますが、これも逆効果です。激しい運動も脳を興奮させてしまいます。そのうえ、寝るときには下がり始めるはずの体温が上がってしまうので、なかなか寝つけないということになります。

睡眠導入剤は毒にも薬にもなる

ストレス社会といわれている現代では、くたくたに疲れているのに寝つきが悪い、ぐっすり気持ちよく眠れないという人が増えています。
睡眠が人間の健康にとって、どれだけ大切なものかを実感するのは、心地よい睡眠が得られなくなってからなのです。

ここにある方(Aさん)の例があります。
Aさんが不眠を訴えるようになったのも、入社3年目に大きなイベントの進行を任されたのがきっかけでした。やらなければいけないことは山ほどあるし、不安とやる気が混じり合い、力が入ってしまったのでしょう。
それまでは、横になったと思ったら、気持ちのよさそうな寝息をたてていたのに、ふとんに入ってからもなかなか寝つけない日々が続きました。

数日、経過すると、だんだん体はだるくなり、動きも鈍くなってきたといいます。倦怠感が強く、頭もぼんやりともやがかかったようになり、判断力も想像力も鈍ってしまったそうです。睡眠時間が足りないから、朝の目覚めもすっきりせず、力がありません。
やっとの想いでふとんを出て会社に向かうことになります。いつもなら、お酒を飲んでワッと騒いで忘れてしまうような性格なのですが、今回は責任が重くのしかかっていたために、酒場に繰り出す気にもなれなかったといいます。

そこで、このままでは仕事にも影響が出ると心配し、薬局で相談し、軽い睡眠導入剤を買ったのだそうです。その夜、さっそく薬を飲むと、強烈な眠気に襲われ、ふとんに入ったとたんに眠ってしまったといいます。それまでなぜ眠れなかったのか不思議なほどで、翌朝もバッと気持ちよく目覚めたそうです。睡眠導入剤も、この1回でやめれば問題はありません。

どのような原因による不眠だとしても、眠ろう眠ろうと過度に神経質になったり、不眠によって体がぼろぼろになってしまうくらいなら、一度ぐっすり眠ったほうが健康にもいいでしょう。

睡眠導入剤で眠った翌日は必ず不眠になる

Aさんは、久しぶりに気持ちよく出勤し、仕事に熱中できたといいます。そして、残業までして家に戻りました。お風呂に入って、明日もがんばるぞ! とばかりにふとんに入ったのですが、いっこうに眠くならないのです。しかも、すっかり目がさえてしまって、意識もはっきりしたままなのだそうです。

これは困ったと思い、また睡眠導入剤を手にとりました。効果は抜群で、その日は前日と同じようにぐっすり眠れたのですが、次の日の夜になると、また眠れなくなってしまったのです。こんな日が数日続いたあと睡眠外来を受診しました。

これは、まさに睡眠導入剤による眠りの特徴なのです。睡眠剤の眠りは強烈で、眠るのはこんなに簡単だったのかと思うくらい熟睡できます。
そして、翌日は「ああよく寝た」と、気持ちよく日が覚めるのです。そして、1日中、爽快な気分で仕事ができます。問題なのは、その日の夜です。寝ようと思っても眠れなくなるのです。
前日に熟睡、というより爆睡しているから、眠れなくても仕方がないのです。睡眠導入剤による眠りは、熟睡のあとに眠れない1日がセットされていると考えなければいけません。それを知らずに、前の日のように熟睡できるなら?と思って、また薬を飲んでしまうと、やめられなくなってしまうのです。

睡眠薬の作用、副作用についてはこちらに詳しく紹介されています。

睡眠導入剤の眠りは自然の眠りと違う

睡眠導入剤の効果は抜群です。しかし、睡眠導入剤による眠気と自然な眠気とは、まったく次元の違うものなのです。わたしたちは毎日、疲れて眠くなってからふとんに入るかといえば、そうではありません。あまり眠くはないけれど、そろそろ寝る時間だからとふとんに入り、ぼんやりしたり、スタンドをつけて本などを読んでいるうちに、眠気に襲われるという場合も多いはずです。

睡眠導入剤というのは、こうした眠りにつくまでの自然のリズムをいっさい無視し、薬の作用によっていきなり眠りに落とすのです。
また、睡眠導入剤による眠りは、質の部分でも自然な眠りとは違います。通常は、ノンレム睡眠という深い眠りとレム睡眠という浅い眠りが1セットになり、それが何度か訪れますが、睡眠導入剤の眠りはひたすら深い眠りなのです。このことは、脳波を見ればすぐにわかります。

ですが、前後不覚に眠り込んだ本人には、どんな眠りだったかという意識もありませんから、十分に寝たという満足感だけが残り、だんだんとそれが忘れられなくなってしまうのです。やがて、通常の眠りではまどろっこしくなり、翌日も翌々日も睡眠導入剤に手が伸びます。そのままにしておけば、ついには、それなしでは眠れなくなるという、困った状況を引き起こしかねません。

長い人生のうちには、恋人が浮気したとか、離れていったとか、何かで頭がいつぱいになって眠れない日が続くこともあると思います。こうした日が1週間も続けば、頭はぼんやりし、体もだるく、何もかも忘れて眠りたいと思うこともあるでしょう。

そうしたときに、1粒飲むくらいなら仕方ありません。しかし、翌日眠れない夜が来ることを覚悟しておいてください。睡眠導入剤を常用しているうちに、通常の眠りでは満足できなくなり、薬がもたらす強烈な眠りでなければ眠った気がしなくなります。
これでは、もう「睡眠薬依存症」の道を歩むしかなくなるわけです。

今は便秘薬にしても、自然の作用を薬が肩代わりできるようになりました。ですが、これはあくまでも、そのときだけの対症療法であり、解決策ではないことを自覚してください。

長過ぎる昼寝やうたた寝は快眠の敵

寝る時間が惜しい!とよくいいますが、寝るのが苦痛だという人はあまりいません。がんばって働いたり活動した日の夜、ふとんに入って横になるのは、たいへん気分のいいものです。
ところが、なかなか寝つけなかったり、眠りが浅く、何度も目が覚めてしまったりではそうもいきません。では、どうすれば快適な睡眠が得られるのか。当たり前のようですが、寝る前には、当然ですが、きちんと起きていることが大切なのです。

つまり、長過ぎる仮眠は、快適な睡眠を奪うということです。快適な眠りとは、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に訪れ、しかも、ノンレム睡眠中に深く眠れるということです。深いノンレム睡眠は、起きていた時間が長ければ長いほど多くなるといいます。
10~20分程度の仮眠は夜の睡眠を妨げないといいます。

もちろん、毎日のことですから、眠らない時間が極端に多過ぎれば、いくら深い眠りが訪れようとも、次の日に影響するでしょう。
しかし、反対に、健康な体なのに、ごろごろ寝ていては、深い睡眠は得られないのです。「寝つきが悪い」人の話を聞くと、お昼ご飯を食べてから、つい2時間ほど眠ってしまうとか、晩酌のあと1時間ほどうたた寝をしてしまうという人が少なくありません。

普段よりも睡眠時間が少なかったときなどは、ちょっとの仮眠でずいぶん元気になることもあります。ですが、す。特に、夕方以降は禁物です。ですが、くれぐれも仮眠は長過ぎないようにすることです。特に、夕方以降は禁物です。い数時間前に眠っていては、寝つきが悪くなっても仕方ありません。

めりはりのないだらだらした生活をしていると、かえって疲れるといいます。それは、眠る時間と活動の時間がはっきりしていないために、両方の密度が薄くなってしまっているからでしょう。

カフェインは目をスッキリ覚ます効果

朝、1杯のコーヒーで眠気が覚め、頭がすっきりしたという経験を持っている人は多いと思います。それは、飲み物が入って胃腸が目覚めると同時に、コーヒーのカフェインが脳を刺激するからでしょう。

コーヒーのカフェインには目を覚ます効果があります。つまり、逆に考えれば、カフェインには眠りを妨げる効果もあるということです。
人によって効き目もさまざまですが、寝る2~3時間前にはコーヒーを飲まないという人もいるくらいです。ただし、カフェインが入っているのはコーヒーだけではありません。緑茶にも、コーラにも、今はやりの健康ドリンクにも入っています。食事が終わってから、お菓子を食べ、お茶やコーラを飲んでテレビを観ていたりすると、カフェインで寝つきが悪くなっているうえに、お菓子が胃腸にもたれて眠りが浅くなってしまいます。

また、寝る前に水分をとり過ぎると、寝入ったころにトイレに行きたくなり、目覚めることもあります。基本的には、寝る前にあまり飲んだり食べたりしないことです。風呂上がりに喉が渇いて健康ドリンクを飲むときは、ボトルの表示をよく見てください。カフェイン入りの飲み物はけっこう多いはずです。滋養強壮剤などはほとんどにカフェインがしっかり入っています。

体のことを考えて睡眠薬以外でぐっすり眠りたい方はこちら

朝の時間は使い方次第で有効な時間に

朝の60分は、夜の数時間分にも匹敵する

忙しい人ほど朝早く起きているという話をよく耳にします。1日のスケジュールびっしりで、夜は夜でパーティーや夕食会などに参加しなければならない人にとっては、朝がいちばんスケジュールをとりやすいのでしょう。

散歩をしたり、ジョギングで汗を流したり、仕事とはあまり関係のない本を読んだりなど、仕事に行く前の朝の時間というのは、やり方しだいで有効に使えるものです。それだけではありません。仕事のあとでは、ぼんやりしてしまって頭がしっかり機能しないことも多いかもしれませんが、朝ならば疲れがとれているのですから、脳も元気で集中力があります。
体も同様に、仕事のあとはくたくたですが、朝にはまた元気を取り戻しています。そのうえ、夜ともなれば飲みに行こうとか、ビデオやDVDを観ようなど、多くの誘惑が生まれます。

しかし、朝にはそういったものがありませんから、自分だけの時間を有効に使うことができるのです。とりあえず、1日でもいいですから、いつもより1時間早く起きてみてください。そして、散歩をするなり、本を読むなり、ゆっくり朝食をとって新聞を読むなりしてみてください。その時間の長さに驚くはずです。同じ時間なのに、朝の1時間は夜の何時間分にも感じることでしょう。

毎朝1時間が積み重なると大きな成果に

毎日早朝に行なわれる英会話のクラスに通い、2年間で十分に会話ができるようになった青年がいます。海外旅行が好きで、連休のたびに貯金をはたいてはさまざまな国に出かけたそうです。
そして旅行から戻るたびに、もっと英語ができたら行動範囲も出会う人もずっと広がるのに…と悔しい思いをしたといいます。何度目かの旅行の帰路、ついに彼は行動に移そうと決心しました。会社の近くに英会話のスクールがあり、初めは夜のクラスをとったそうです。

始まりは午後の6時半ですから、会社が終わってからでも十分間に合うのですが、残業が入ったり、上司に酒場に誘われたりして、なかなか続けられなかったといいます。仕事が忙しくなれば息抜きも欲しくなり、今日はまあいいかと、同僚と飲みに行ってしまう日もあったそうです。結局、休みがちになってしまい、授業も飛ばしてばかりでは身が入らず、思い切って朝のクラスに変更したのです。

最初のうちはつらかったものの、これまでのように休んで月謝をむだにしたくないという気持ちも強く、ときには這うようにして通ったそうです。

彼によると、起きるときはふらふらでも、クラスへ行けば、楽しくて目が覚めるのだそうです。15五人近くのクラスなのですが、一方的な授業ではないので緊張もするし、学生を中心にさまざまな職種の人たちなど、面白い顔ぶれが集まっているので、雑談をしても刺激になるというのです。そのうち、それが日課になり、毎日通って英語も上達するから行くのがますます楽しくなり、2年間続いてしまったといいます。毎晩仕事が終わってから、自分だけの自由時間を1時間とろうと思っても難しいものです。

しかし、朝なら決心しだいで十分可能になります。水泳でも、少しずつ絵を措くことでも、通信教育で資格を取ることでもかまいません。
何をするにしても、朝の一時間が積もれば大きな時間になるはずです。起きるのがつらくても、目標があれば励みにもなります。そのうえ、今まで気づかなかった何かを自分の中に発見したり、上達するという喜びを実感すると、ますます楽しくなるに違いありません。

これまでふとんの中にいた1時間も、積もれば自分の財産になるのですから、朝の時間は見過ごせません。

15分早く起床すれば1日に余裕がでてくる

早起きにはもう1つの利点があります。昼間中心の社会のしくみの中で、人より少し早くスタートが切れるということです。そして何よりもいいのは、何をするにも余裕が生まれるということでしょう。

いつもぎりぎりの時間に会社に着いていた人は、余裕を持って出社し、15前に席についてみてください。その日のスケジュールを反芻するもよし、コーヒーを飲みながら午後の会議の書類に日を通すもよし、上司と世間話をするのでもかまいません。追い詰められた気分で出社時問にすべり込む状態に比べれば、精神的にも余裕があり、体全体にエネルギーがみなぎるはずです。

人は心に余裕があれば、それが自信につながり、歩き方からしやべり方まで変わってきます。たとえば、会議で何かを提案するときも、下調べがきちんとしてあったり、確信しているときにはひと言ひと言が自信に満ちています。

反面、少し不安だったり、勉強不足だったりするとおどおどした態度になり、生彩を欠いてしまい、訴える力もなくなってしまいます。
いくら朝がつらいといっても、たった15分早く起きるだけでいいのです。それだけでも、その先の1日がまったく違うものになります
。ちょっとの努力を1週間続けてみてください。余裕が生まれれば、周りのいろいろなものが目に入り、世界が広がったような気になるものです。ひょっとしたら、世界がこれまでとは遣って見えるかもしれません。

目覚めてもすぐに体は動かない

「朝に弱い」人は、ぎりぎりの時間まで寝ていますが、起きたとなったら、びっくりするほどの猛スピードで身じたくをし、家を出るという特技を持っています。
それはそれで立派なことですが、残念ながら、身じたくはできても、体の中はそんなにすぐには動けないのです。

まず、胃腸です。起きて牛乳などを飲み、朝食を食べ終わったころ、やっとウンチがしたくなります。しかし、起きてすぐに家を飛び出したのでは、胃腸が活発に動き出すのは会社に着くころです。出かける前に牛乳を飲んだのはいいけれど、電車の中でトイレに行きたくなり、冷や汗をかいたという詰もあります。

睡眠と腸の働き | 眠りの悩みを解消しよう!によると夕食を早く済ませ空腹で眠るのがベストだそうです。また、夜遅い時間に食べている人の腸は汚れがちだそうですので、こういったことも朝、起きられない要因になるかもしれません。

脳や体の各器官にしても、起きてすぐに活発に動き出すわけではありません。シャワーを浴びたり、朝食を食べたりという刺激によって、少しずつ動き始めるのです。できれば、出かける1時間前には起きたいものです。この1時間で、体は万全の準備を整えることができるのです。

朝、起きて、夜、眠る仕組みになっている

朝起きて夜眠ることで、体内時計は1日のリズムを刻む

忙しいとき、1日がもう少し長かったらなぁと思うのはみんな一緒です。残業のあとで映画にも行けるし、朝もゆっくり眠れるはずです。
悲しいかな、わたしたちは1一日24時間という単位の中で生きる以外の選択肢はありません。

では、その24時間の中で、人はなぜ朝になると目覚め、昼間は活動し、夜になると眠くなるのでしょう。それは、体の中にリズムを刻む時計が備わり、指示を与えているからです。
これが、いわゆる「体内時計」です。体内時計は、朝と夜のセットで1日という認識をしています。そして、光によってそれを感知しています。明るいところにいれば、ここは昼だなと思い、暗いところで眠ると、ここは夜だなと思うわけです。

このセットによって、1日が経過したと判断します。体内時計の周期は24時間ではなく25時間です。したがって、光がまったく入らず、温度もー定のほら穴で時間を知らずに生活すると、1日1時間ずつ時間がずれてしまいます。

つまり、12日後に真夜中の12時と正午が逆転し、24日後に元に戻るのです。もし、体内時計のままに1日を送れば、日付や時間の単位がずれてしまい、混乱を招くでしょう。そこで、わたしたちは社会の時間の動きに合わせて、毎朝体内時計を一時間ずつ早めるようにしているのです。とはいえ、毎朝体内時計に変化が起こっているわけではありません。いつもの時間に目覚まし時計が鳴り、目をこすりながら起きることで、1時間の調整を行なっているということです。

この一時間の修正に、光は欠かせない要素です。太古の昔から、体は陽が昇れば夜が終わったと認識してきたのですから、雨戸やカーテンを開けて朝の光を感じることで、目覚まし時計で叩き起こされた体が目覚めていくわけです。

朝起きられないのは、体の中の自然破壊

人は昔から、この体内時計のリズムに合わせて生活をしてきました。体内時計のリズムは、もともとは「日の出」と「日の入り」という太陽の周期に関係していたのだろうといわれています。昼間の明るいうちに活動し、夜の暗闇は静かに身を潜め、獣などの攻撃から逃れようとした太古の生活のリズムが、長年のあいだにすっかり体に備わったのでしょう。

ところが、いつからか夜眠れないとか、朝起きられないという人たちが出現しました。これは、体の中の自然破壊ともいえるでしょう。本来の体内時計からいえば、陽が昇ると同時に目覚め、陽が沈むと同時に眠りにつくのが本当です。しかし、今は朝起きるといっても、陽が昇ってからずいぶん時間が過ぎています。

人は、時代が進むとともに、社会のしくみに応じて体内時計を四〜五時間ずらしてきたわけです。現在、環境問題は地球にとって重要なテーマになっています。森林の伐採が地球にどういう影響を及ぼすのかが、すぐにはわからなかったからこそ、今たいへんな問題になっているのではないでしょうか。

「体の中の自然」も同じです。夜中まで起きている日があれば、昼過ぎまで眠っている日もあるという、体内時計に反した生活をしていても、すぐに体に影響が出るわけではありません。しかし、徐々に破壊され、気がついたときには眠気を感じとるセンサーも、朝日覚めるセンサーもおかしくなって、いつ眠っていつ起きればいいのかが、体自身ですらわからなくなってしまうこともありうるのです。

眠りのリズムは体のリズムと連動している

体内時計は、睡眠と覚醒のためだけに作動しているのではありません。トイレに行きたくなったり、お腹が空いたり、血圧や体温が上がったり下がったりすることを含む、すべての生体のリズムを刻んでいるのです。これを「サーカディアンリズム」といいます。
このサーカディアンリズムは、体の各器官で個々になりたっているわけではなく、すべての器官がバランスをとって、まわるようになっています。したがって、どれか1つに狂いが生じると、すべてがおかしくなってしまうのです。

なかでも、体温は眠りと深く関係しています。たとえば、「熱がある」というのは、平熱よりも熱があるということです。つまり、それぞれに自分の平均体温があるわけですが、この平熱も一1日中一定なのではなく、睡眠と覚醒のリズムと連動して、上がったり下がったりしているのです。

通常、体温は明け方5~7時くらいに最も低くなり、起きてから徐々に上がります。そして夜の九時〜十一時くらいになるとピークに達し、下がり始めたころ眠くなります。眠っているあいだに下がり続けて、明け方最低になり、起きると再び上がるというリズムで、毎日動いています。もちろん、朝型、夜型というように、人によって多少のずれはありますが、だいたいこのようなリズムを刻んでいます。逆にいえば、体温が低いときは眠いし、高いときは目覚めるという体の状態になっているのです。そのため、夜のほうが朝より快適に眠りやすいし、朝のほうが目覚めやすいのです。にもかかわらず、深夜になって体温が下がっているのに、夜更かしをして明け方になつてから眠るような生活パターンでは、朝になって体温が上がっていてもなかなか目覚めることができません。
また、昼ごろまで寝ていた日は、体温が下がったからといって、いつもと同じ時間に寝つけるはずもないでしょう。

朝起きて夜眠ることで、体全体のバランスは保たれている

結局、睡眠と覚醒というリズムがおかしくなることで、体温、食欲、排壮、血圧、各種の神経系統などのすべてのリズムを崩してしまうことにもなりかねません。仕事がら、朝起きて夜眠るわけにはいかない人たちもいます。

たとえば、夜にお店をやっている人、月の半分くらいは海外出張に行く人、飛行機の国際線に乗務する人、夜勤の警備員や看護師さん、コンビニエンスストアの店員などです。現代は多くの人が、畳も夜もない生活をしています。

夜なら夜だけという仕事ならまだいいのですが、国際線のパイロットや客室乗務員などは、常にいろいろな国の時間で生活しなければなりませんから、毎日不規則な生活を強いられているようなものです。これでは、しだいに体も混乱し、さまざまなリズムが狂ってしまうでしょう。そのための対応策として、外国にいるときでも日本時間に合わせて寝起きをしているそうです。
そうしなければ、日本に帰ってきたときに調子が悪くなるといいます。看護師さんも日勤と夜勤が入りまじっていますから、体のリズムを壊しやすい仕事です。
看護師さんの中には、仮眠などで調整をし、昼と夜のリズムを壊さないようにしている人も多いようです。

血圧、ホルモン、体温などは自分で調整するのはとても難しいものです。けれども、いつ眠っていつ起きるかなら、自分でもコントロールできます。ですから、生体のリズムをスムーズに回転させるには、睡眠と覚醒をしっかりおさえればいいともいうことができます。
つまり、朝起きて夜眠るという生体の自然のリズムは、完堅なまでに体のバランスを保っているというわけです。

夜眠らないと睡眠時聞が少なくなるだけ

社会の時間帯は昼間が中心ですから、銀行に行く、郵便局に行くなど、日中のうちにすませなければならないことは数多くあります。

長年夜の仕事がメインになるスナックのママをやっている人がいます。お店が終わるのが夜中の3時、そのあと片付けをしていると、寝るのが毎朝5時とか6時になるそうです。それでも、毎日朝の十10時時くらいには起きるというので、「睡眠が足りないでしょう」と尋ねると、昼間のお付き合いがあるので、眠っているわけにはいかないといいます。

社会とずれた時間帯ではあるけれど、自分にとっては規則正しい生活をしようと思っても、先方の都合で昼間寝ていられないということもあるはずです。

ですから、夜寝ておかないと、結局、睡眠時間が少なくなってしまいます。また、今の社会の時間帯の中では、夜眠ったほうが規則正しい睡眠がとりやすいともいえます。毎日規則正しく、朝寝て夕方起きている人でも、休日にはデートをしたり、家族と出かけることもあるでしょう。

もし、デートの相手が日中に会社に勤めている人なら、遊園地やピクニックに行こうと思えば、待ち合わせは午前の10時ごろになるはずです。普段ならぐっすり眠っている時間帯ですから、体は時差ボケの状態で、今が昼なのか夜なのか混乱してしまうでしょう。
規則正しい生活ならば、いつ寝ていつ起きてもいいような気がするかもしれませんが、昼間中心の社会では、そのリズムで365日を送ろうとしても、思うようにはできません。
ことに、夜起きている人には、昼間も何かと起きていなければならない場合も多く、不規則で、睡眠時間も少なくなりがちです。ですから、日本で生活している以上、朝は起きて夜は寝たほうが、寝やすいし起きやすいということになります。