布団の扱いについて(しまい方・使い方)

布団は自分専用のものを使う

睡眠には個人差があります。体格が一人一人異なれば、年齢、健康状態も異なり、体質も発汗量も個人個人異なります。そんな個人差に合わせて、布団の厚さや硬さを選ばなければならないのですから、たとえ家族であっても、布団を使い回したら安眠は得られません。個人に合わせてそれぞれの「マイ布団」を用意するのが安眠のためには必要です。

起床後にすぐに布団をあげない

起きたままいつまでも布団をたたまないのはだらしない、というのが子供のころのしつけだった人がほとんどです。しかし、毎日のように布団干しをしていた主婦が、仕事で外へ出ることの多くなった現代では、それは当てはまらなくなりました。
睡眠中にかいた汗を吸って、布団はしっとりしています。それをそのまま押し入れに入れてしまうと湿気が発散できず、こもることになります。カビの原因にもなります。せめて外出までの1時間でも、30分でも空気に触れて湿気を蒸発させてやるといいでしょう。
起床したら布団はそのままに、出かける直前にたたんでしまうようにすれば、いくらかでも湿気は抜けます。気持ち悪いようだったら就寝前に「布団乾燥機」を使うといいでしょう。

押し入れには掛け布団からしまってはダメ!

起床後、すぐにたたんだ布団を押し入れにしまうと、寝汗の湿気をふくんだまま収納することになる。だらしないようでも、起きてからしばらくは布団をそのままにして…というのは前に述べたとおりです。ただし、そのとき、床にのべてある順に、掛け布団、敷き布団と収納するのでは、仏つくって魂入れずになってしまいます。
もともと掛け布団の命は、ふっくら空気おおをふくんで軽く体を覆うところです。だからこそ、保温力も高まるのです。敷いてある順にしまうと敷き布団が上にのることになって、掛け布団はその重みでつぶれてしまいますから、押し入れにしまうときは、掛け布団をいちばん上にしまうようにします。

布団圧縮袋について

客用の予備布団や、冬用の厚いものの保管に、布団圧縮袋は大人気です。たしかに便利ですが、安易にどんな布団にでも使っていいものではありません。ビニール袋の中の空気を抜けば、そのぶん圧力がかかっているわけで、その力は想像を超える力で500kgにもなるのです。これをいくつか重ねた状態で何か月も置けば、天日に干したからといって、すぐ元にはもどりません。さらにポリエステル綿や羊毛は、一度つぶれてしまうと、日に当てても元にはもどらない性質があります。使う布団、使う期間には気くぼりが必要です。

安眠のための正しい布団選び

重い掛け布団はダメ!

軽い布団だとふわふわして、寝返りのたびにどこかへいってしまうし、あまりに軽いと寝ているような気がしない…というなかなか難しい布団選びです。しかしこれは、あくまで錯覚や思いこみ、習慣からくるものでしかありません。逆に重い布団は体を圧迫し、覚醒刺激になってしまいます。重い布団で「安眠している」と実感しているような人は、それだけ眠りが浅いのです。深く、ゆっくり眠れる方法をしっかり考えなくてはなりません。

赤ちゃんはせんべい布団が最適

ふかふかの布団で眠らせてやりたい、という親心は、赤ちゃんにとって逆効果です。幼いうちは背骨がやわらかく、敷き布団がふかふかだと背骨が曲がりやすく、まっすぐな姿勢が保てません。赤ちゃんの頃には、硬いせんべい布団のほうがよいです。

ポリエステルよりも羽毛布団

軽い掛け布団を使うのは安眠の条件のひとつ。重くずっしりした木綿わたにかわって人気になったのが、ポリエステル綿の布団です。軽いうえに安いので人気を集めましたが、吸湿性を考えるとデメリットのほうが大きくなります。やはり自然素材に勝るものはありません。
そこで、おすすめなのは羽毛素材。ダウンばかり使ったものだと高価ですが、スモールフェザーとの混合なら価格も手ごろになってきています。

防ダニ布団には要注意

一般に防ダニ効果をうたった布団では、ダニ除けのためにどんな化学物質が使われているかわからないところが心配です。たいていはメーカーごとに、ダニ忌避剤を工夫し、それを布団の中綿に染みこませてある仕組みですが、その薬品が、逆にアレルギーの原因になることもあります。ダニアレルギー防止のために買った布団で薬品アレルギーを起こすこともあるのなら、天日干し、掃除機かけでのダニ退治を心がけたほうがいいでしょう。

季節ごとに寝具を変更する

布団を天日干ししてホコリを取り除き、シーツもカバーも洗濯をこまめにして清潔に保っても、それで安眠が得られる… といかないところが、布団の難しいところです。専門家たちのあいだで「寝床内気象」と呼ばれる、布団の中の温度が問題だと指摘されています。ふつうは、寝るまでは室内と同じ温度の寝床も、人が入ると体温によって内部温度が上昇し、20分程度で体温より低い32~34度に落ち着きます。湿度も同じ経過で、最終的には、45~55%くらいになるのが理想的です。人間の体から発散される熱量と布団から放出される熱量のバランスが保たれていれば、この状態で朝までグッスリ眠れます。ところが、このバランスがくずれたとき、たとえば冬の寒さで体を丸めてしまうようなことになり、結果的に睡眠で疲れてしまうのです。
季節に合わせた寝具のチョイスが大切な理由はここにあります。

安眠の為には「布団」か「ベッド」か?

布団のメリット・デメリット

日本の住まいのよさは、昔からその融通性にあるとされてきました。畳の部屋がひと間あれば心理的にも「ホッ」として、そこが居間として家族の団らんの場になったり、食堂になったりもします。また、ちゃぶ台をたたんで押し入れから布団を出せば寝室に早変わりするのも和室のよい点です。
狭い国土の日本の住宅事情では、布団は便利です。ただし、それだけの理由で寝具は布団と決めるのはちょっと違います。
マンションなどの機密性の高い部屋では、布団で寝ると、床近くに舞い降りたホコリをたっぶり吸うことになり、けっして健康的とはいえません。部屋が狭ければ、なおのことです。また、一晩かいた汗をたっぶり吸った布団を干す手間は、スプリングのおかげで空気還流があって自然に湿気を発散できるベッドに比べ、かなり面倒です。
間取りの余裕、健康面、手間などを考えあわせて、布団かベッドかを選択するようにしたいところです。

すぐにベッドに変更するのはよくない?

保温性、湿気対策の面からいえば、布団を敷くよりベッドのほうが優れているのは事実ですが。それならば…といきなりベッドに変えたからといって、不眠ぎみの人が熟睡できるようになるかというと、そうではありません。
横になったとき、見える光景が急に変わったり、周囲にべッドを支えるものが見えないと不安を感じるなど、寝つきを悪くする原因になることもあります。
睡眠の環境を整えるといっても、前提として個人の好みがあることを忘れてはいけません。

部屋のスペースも考慮する

畳の部屋に布団を敷いて寝るのは、その部屋が日常は、ほかのことに使えるという利点があります。しかし、冬は温まった空気が上にたまり下は寒いこと、床から伝わる湿気や冷気のことを思えば、ベッドのほうが快適な睡眠を得やすいことなります。
そこで、ベッドを置いて夫婦の寝室にしたい!と考えた場合、ベッドを入れたらそれだけで部屋がいっぱいというケースも困りものです。ゆとりやくつろぎの雰囲気が必要な寝室は、ベッドもふくめて家具を置くスペースが床面積の半分を超えないのが理想です。
自宅の住環境を考慮して、それが望めないくらいなら、眠りに障害をかかえる人は布団で寝るほうが安眠のためにはベターでしょう。