朝に弱いことが原因のトラブル

なぜ、朝早く起きるのか?

昔は、「朝に弱い」といえば、単なる怠け痛くらいに思われていました。現在では、多くの人が、さまざまな理由によって朝起きることに苦労しているようです。

それは、文明が進歩し、昼夜の別のない生活ができるようになったために、本来人間が持っている『夜に眠って朝に目覚める』という体のリズムがおかしくなってきているせいだという皮肉な理由もあります。

もともとは陽が昇ると起きて陽が沈むと眠っていたのですから、そのころから比べれば、現在は4~5時間は時間のずれた生活をしているともいえます。それならば、あと1時間眠ったとしても、人間本来のリズムが狂うこともないだろう、せめて1時間、いや、30分でいいから眠っていられればと思っている人も多いはずです。

このように悩んでいる人が多いのに、なぜ朝早く起きなければいけないのでしょうか。この素朴な疑問の答えは簡単です。社会のしくみが午前9時から午後5時までという時間帯を中心に動くようになっているからです。
これがもし午前11時から午後7時だとしたら、いつもより一時間遅く起きても、朝食をすませてから余裕を持って出勤できるでしょう。

日本では、郵便局、市役所などの公共機関、銀行、デパート、さまざまな会社など、ほとんどの機関が稼働するのは、午前9時から午後5時、遅くとも午後7時のあいだです。そして、午後5時以降に、居酒屋やスナック、クラブなどの遊びやくつろぎのエリアが始動します。昔のTV-CMに「5時まで男」と「5時から男」というのがありましたが、まさに午後5時を区切りに、活動の時間帯とくつろぎの時間帯とが分かれるという社会なのです。

体のリズムに合った生活をするためだけなら、毎朝7時ではなく8時に起きてもいいでしょう。にもかかわらず、7時に起きなくてはならないのは、9時には会社に出勤しなければならないからです。つまり、社会のしくみを優先させた生活を強いられていて、このような社会で生きていくには、朝早く起きられないとさまざまな問題が生じます。遅刻ばかりしていれば信用を失うし、午前中ぼーっとしていては仕事の能率が上がりません。したがって、社会生活に適応できない人とみなされてしまいます。そもそも、本人が毎朝つらい思いをしなければならないなど、それだけでもつまらない話です。そのうえ、朝起きられないというだけで、さまざまな損をしてしまうことになるのです。

朝リラックスする時間がないので便秘になった

朝起きてから何分くらいで家を出ているでしょうか?できることなら、シャワーを浴びて朝食をとり、そのあと少しゆっくりしてから出かけたいと思いませんか。それなのに、あと5分でいいから眠っていたい…という気持ちについつい負けてしまい、結局、ぎりぎりの時間に飛び起きて、急いで顔を洗って家を飛び出すという生活パターンの人も多いのではないでしょうか。

たしかに遅刻さえしなければ、会社では文句をいわれることもないでしょう。しかし、朝のリラックスタイムがないということは、体のバランスにはとてもよくないのです。

その理由のひとつに便秘になりやすいことがあります。みなさんも経験からおわかりかもしれませんが、人間が便意を催すのは、たいてい朝です。食事は1日に3度とるのに、どうして時間のない朝にトイレに行きたくなるのだろうと思いませんか? ロに入った食べ物が24時間かかってウンチになるとしたら、夕食後にトイレタイムが来てもいいような気もしますが、朝に便意を催すのには、きちんとした理由があるのです。

朝目覚めるのは、意識だけではありません。体のあらゆる器官についても同様です。眠っているあいだ、体はすっかり活動を停止しているわけではないのですが、かなりトーンダウンしています。寝る前にお腹いっぱい食べると翌朝胃が重くもたれてしまうのは、眠っているあいだは胃や腸が起きているときのような活動をしていないからです。そのため食べたものを翌朝までに消化しきれず胃に残しているので、胃が重いという症状になります。

朝起きると意識とともに体が目覚め、さぁ朝だ… とばかりに胃腸も活動を始めます。しかし、寝起きがいい人と悪い人がいるように、胃腸もいつも元気よく目覚めるとは限りません。起きてからしばらくは、ぼーっとしていることもあるのです。便秘には寝起きに冷たい水や牛乳を飲むといいというのは、この刺激で胃腸を目覚めさせることができるからです。

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排便をがまんすると、便意のセンサーが鈍ってしまう

便意というのは、直腸に便が入ると催すしくみになっています。ですから、朝起きて、胃や腸が目覚めていれば、自然とトイレに行きたくなるはずです。
しかし、目覚まし時計で飛び起き、シャワーを浴びる時間もなく、軽く洗面だけして家を飛び出すような生活では、「胃腸の目覚まし」代わりの牛乳一杯を飲む時間もありません。せめて駅で缶コーヒーでもと思っても、時間がぎりぎりだから、到着した電車に走って乗り込むような始末。会社にたどり着いてやっとひと息つき、そのときに飲む一杯のお茶やコーヒーが、最初の飲み物ということも十分考えられます。

したがって、朝ぎりぎりの時間に起きる人は、「さあ仕事が始まるぞ」というころになってから、胃や腸がやっと目を覚まして動き出すので、トイレに行きたくなるのです。

かといって、会社で排便はしにくいものです。特に女性の場合、多少の便意ならがまんしてしまう人も少なくありません。そして、それが便秘の元になります。わたしたちは、通常1日に1回は排便します。しかし、そうしてがまんしているうちに、便意のセンサーが鈍ってしまい、便が直腸に下がってきても便意を感じにくくなります。

そのうち便が硬くて出にくくなり、トイレで30分たっても出ないというような状態になってしまいます。さらに、何とか出たとしても、ころころした硬い便が数個だけで、その奥にある便までは出ないのです。

便が硬くなるのは、便意のセンサーが鈍ってきていて、軟らかい便がころころの硬い便になるまで感じないからです。対症療法として、便秘薬を飲んだり、浣腸をしたりする人も多いでしょう。
ですが、腸のセンサーがころころの硬い便になるまで感じないほど鈍っているのですから、そのときは便が出ても、また次からは硬くならないと出ないという状態が続きます。

快食、快眠、快便とはよくいったもので、便秘というのは本当に不快です。不快なだけならまだいいのですが、考えている以上に体のバランスを崩してもいます。

特に女性は肌に吹き出物などが出て、新たな悩みが生まれます。ぎりぎりの時間に起きて会社に駆け込むような人は、30分でも早く起き、トイレをすませてから出社することをおすすめします。朝のトイレタイムを持てるか持てないかで、毎日の心身の快適度がまったく違うのです。それが実感できるようになると、毎日便秘で苦しむよりは、少々無理をしてでも朝起きることのほうが、ずっと楽だと思うに違いありません。

朝、起きられない人は太る

朝が苦手だという人は、1分でも余分に眠っていたいのですから、家を出るのはぎりぎりで、朝食を食べずに出社するという人がほとんどでしょう。また、大学生やフリーターなど、時間が自由になる人であっても、寝起きの悪い人は胃腸の寝起きも悪く、起きてすぐにはものを食べられないという人が多いのです。

社会人なら朝食を抜けば大抵は昼休みまで何も食べられませんから、朝起きて4時間以上何もお腹に入れないことになります。お昼になればさすがにお腹が空くけれど、たった1時間の昼休みで、たらふくお腹をいっぱいにしようという人はいないでしょう。近くのレストランのランチ、あるいはおにぎりやサンドイッチで簡単にすませてしまいます。
それでも、とりあえず1回目の食事ですから、そこそこお腹がいっぱいになります。そして仕事に戻り、3時にコーヒータイムでお菓子を食べるくらいで夕食を迎えます。問題はそのあとです。
まっすぐ帰宅して家で夕食を食べる場合、その日は会社でお昼を1食しか食べていないのですから、かき込むようにがつがつと食べてしまいます。これでは、1 日の食事の中で夕食の比重が重くなってしまいます。

しかも、お腹はいっばいなのに、心の空腹感が消えず、しばらくするとお菓子に手が伸びることもあるでしょう。帰宅の前に同僚の何人かと飲みに行った場合でも、さんざん飲んで食べたのに、つい帰りにラーメンを…ということにもなります。

このようにバランスの悪い食生活は、時間が自由になる人であれば、もっと顕著に現れます。お昼に起きて、3時ごろ昼食。夕飯時には軽く食べておいて、夜中に夜食というパターンです。人間の体はリズムを持って生活しているのですから、朝起きるのが遅かったり朝食を食べ損ねたりすれば、そのぶん、通常のリズムより後ろにずれていることになります。

ですから、夜遅くなり、本来ならもう胃腸も休息する時間なのに、お腹が空くのです。ここで夜食をとるかどうかが、女性にとっての悩みの種となるはずです。女性の方ならご存じでしょうが、太る原因の最たるものは、「遅い時間に食べる」ことです。モデルクラブなどでは、食事の制限はしなくても、夜8時を過ぎたら絶対に何も食べてはいけないと指導しているところもあるほどです。
逆にいうと、朝早く飛び起き、昼間めいっばい活動すれば、夜更かしして遅い時間に食事をとることがなくなり、少々のダイエットより効果があるかもしれません。

生理不順の原因は不規則な睡眠時間が原因

生理不順というと、すぐに頭に浮かぶのは、ホルモンの異常や婦人科系のトラブルです。しかし、案外身近にも原因があるのです。
人間の体は、サーカディアンリズムという生体のリズムにのっとって活動しています。このリズムを刻んでいるのが体内時計ですが、体内時計は朝が来て夜が来て1日というように、朝の訪れを感知することで1日がスタートしたものと数えます。

そして、女性の生理は、この1日が約28回来ることで1つの周期を刻んでいます。ですから、週末だからと徹夜して朝に眠り、夕方起き出して朝方まで眠れず、次の日はデートで昼には起きて…という不規則な生活では、体内時計はいつが朝でいつが夜なのかわからなくなり、実際には朝が来て夜が来て1日たっているのに、体内時計では1日をカウントしないということになります。
そうなると、体内時計が数える日数と実際の日数のあいだに大きなずれが生じ、生理の周期もずれてしまうのです。

最近の若い女性に生理不順の人が多いのも、不規則な生活が原因という場合が多いかもしれません。多少、生理が不順だったとしても、体への影響はとりたててないでしょう。けれども、生理の周期が狂うということは、女性の体の機能に狂いが生じているということなのです。
逆に、そのせいでホルモンや自律神経に影響しないとも限りません。痛いとか、熱があるという形で現れなくとも、体のバランスが崩れれば、体の各器官にさまざまな影響があります。

こんなところからも、眠りと覚醒のリズムにのっとり、朝起きて夜眠るというのが、実はどんなに重要なことかおわかりいただけると思います。

毎日遅刻すれすれ、通勤時のいらいらが思わぬストレスに

遅刻すれすれの時間まで眠っている人は、起きてから猛スピードで身じたくをして脱兎のごとく家を飛び出し、会社にすべり込むという毎日です。たまにであれば、「あー間に合った」と胸をなでおろせばいいのですが、毎日がこんなパターンでは、精神的にもかなりの負担がかかります。

毎日のことですから、この電車ならぎりぎりOK、次の電車なら遅刻すれすれと、電車の時間はわかっているという人もいるかもしれません。しかし、バスなら道路の混み具合によって数分の誤差が出ます。

また、晴れや雨の日など天気によって、歩くスピードにも多少の差が出るでしょう。とにかくぎりぎりですから、少しの誤差も許されないだけに、前をゆっくり歩いている人がいれば先に進めず、いらいらするでしょう。

人ごみを走り抜けようと思えば、人にぶつかりそうになり、前を見てさっさと歩けなどといいたくなったことはありませんか。遅刻すれすれまで眠っていると、会社に着くまでのこの間、ずっと、時計とにらめっこで、いらいらした気分で過ごすことになります。

この毎朝のいらいら気分だけでも、積もり積もれば大きなストレスになります。通勤=「いらいら気分」ですから、寝坊の自分を棚に上げ、会社に行くのが嫌になるという人もいるくらいです。こうした朝からのいらいら気分は、その場の不快感だけでなく、仕事にも影響します。

息を切って駆けつけた状態では、すぐに頭は働きません。何をするときでも同じことですが、精神を落ち着かせるまでには時間が必要です。
ぎりぎりに駆け込んでいては、少なくとも、そのぶんロスタイムになります。到着してすぐに会議が始まるときなど、なおさらです。精神を落ち着けるのに時間がかかり、なかなかふだんの自分の頭に戻りません。
結局、いいアイデアも出ず、会議でもさえない発言しかできずに終わることになります。朝起きるのが人より遅いということは、1日の始まりで出遅れているのです。

朝のいらいらが仕事の能率を下げる

成績はたいへん優秀で頭もよく、第一志望の大手メーカーに就職も決まりました。その彼のたった1つの欠点が、「朝に弱い」ことだったのです。
昔から夜型人間で、朝起きるのがものすごくつらいというのです。朝はぎりぎりの時間まで寝て、親御さんに起こされて必死に起き、会社に駆け込むという生活が続きました。
社会人としての責任もあり、遅刻はしないのですが、毎日がぎりぎりセーフなのです。それでも入社した最初のうちは、はりきって仕事をするということで、高い評価も受けていました。

しかし、そのうちに同期が1人、2人と新しいプロジェクトなどに抜擢されていくのを悔しい思いで見守ることが多くなりました。そして、ある日彼は、それは自分が人より朝出遅れているせいだと気づいたのだといいます。

「11時くらいまでボーッとしていて、頭がさえないんですよ。会議に出ても集中できないし、積極的に仕事に取り組む気が起きないんです。それで、昼休みが終わってしばらくすると、やっと自分のペースになったなって思うんだけど、そこから仕事に馬力をかけても、すぐ退社時間になっちゃうでしょう。

1人の作業なら残業って手もあるけど、上司や相手先のあることだと、あくる日に延びちゃうわけです。これだと仕事の能率も悪くなるし、スタートのタイミングが遅れちゃってるからすべてが後手にまわっちゃって、上司に催促されたりして…。

できないやつって思われちゃったみたいです」彼の場合は、そんな自分に嫌気がさし、どんなにつらくても朝は余裕を持って出社するように心がけました。すると、仕事の能率が上がるのに自分でも驚いたといいます。

「今でも朝はつらいですけど、前よりはだいぶ楽に起きられるようになりました。何事にも慣れってあるんですね」今ではそういって頭をかきます。習慣をつけることで、朝起きることは非常に楽になります。急な坂も、毎日上っていれば苦しさが半減するのと同じことです。朝がつらいのも、毎日早起きしていれば、少しずつ楽になるでしょう。