「何時に眠ればいいんですか? 」という質問はよくあります。ヒトは、「暗くなったら眠る」、「疲れたら眠る」という仕組みなので、本来は眠る時間を考える必要はありません。
私たち人間の生体リズムは、就寝時聞からではなく、起床時聞からスタートします。
脳のマスタークロックである視交叉上核が光を感知すると、体内の細胞に存在する時計遺伝子の活動時間が決まり、生体リズムが刻まれます。
つまり、眠る時間はその日の起きた時間によって決まるということです。例えば、休日に昼前まで眠っていて、明日は月曜日だから早めに眠ろうと思ってベッドに入ったのに、結局なかなか寝つけなかったというご経験があると思います。
これが、眠る時間は起きた時間によって決まるという現象が実感された場面です。通常は、成人では起床から柑時間後、子どもではH時間後に夜間の自然な眠気がくることが知られています。
脳にとっての生活のスタートはあくまで起床したときなので、「何時に起床するか」を決めることが重要です。ではなぜ、私たちは自分の適切な就寝時間を考えてしまうのでしょうか。
それを知るために、眠る前の行動を振り返ってみましょう。
忙しい1日がようやく終わり、眠る前はようやくひとりになれる時間です。ここで、頭の中では今日の反省をします。「Aさんにとっさに聞かれてああいう言い方をしたけど、こう言えば良かったかも」というように、今日の出来事を振り返り、修正すべきことをぼんやりと考えます。
一通り、この作業が終わると、次は明日の予定について考えます。「気になった本を調べておかなきゃいけなかった、明日訪問する取引先の会社の概要を見ておくんだった、それと…という感じで、やらなければならないこと、やり忘れていることが思い出されます。
頭の中ではこんな感じで反省と予定立てが浮かんでいるのですが、単調な毎日からちょっと抜け出したい気持ちで、テレビやネットをつけてしまい、なかなかやるべきことに手がつけられない。でも「その日のうちに反省しないと」と思い、睡眠を削ります。
そして、いざ眠ろうとするとなかなか寝つけなくなってしまいます。翌日は、というと、朝になってもなかなかベッドから出られず、イライラしてしゃべりたくない。「あれもこれもやらないうちに今日になっちゃった」と昨夜の自分に苛立ちつつ、焦ります。出勤して仕事が始まると眠くてしょうがなく、デスクに飲み物をたくさん置いて頻繁に飲んだり、気分転換にコンビニに行ったりするけど、帰ってくるとやっぱり眠い。夕方頃にドタバタと忙しくなり、夜に帰ってくるとどっと疲れが出てしまい、せめて気分を変えようとテレビをつける。
このような生活サイクルだと、毎日が必要以上に忙しく感じてしまいます。この中に、疲れているのに睡眠を削る理由が見つかります。
それは「その日のうちに反省しないと」という考えです。「反省はその日のうちにしなさい」この言葉は、子どもの頃や学生時代に、誰もが一皮は言われたことがあるのではないでしょうか。
どうやら、私たちはこの考えにしばられて、自ら睡眠時間を削ってしまうようです。それでは、反省をその日のうちにせず、家に帰ってきたらバタンと眠ってしまったという日はいかがでしょうか。
やらなければならないことがあったはずなのに昨日は寝ちゃったと思いつつも、頭がスッキリしてやるべきことは明確になっていたというご経験がありませんか?
実は、睡眠には、捨ててよい記憶を捨て、本当に反省すべき記憶だけを残すという働きがあるのです。