苦手な朝を克服

朝、起きて、夜、眠る仕組みになっている

朝起きて夜眠ることで、体内時計は1日のリズムを刻む

忙しいとき、1日がもう少し長かったらなぁと思うのはみんな一緒です。残業のあとで映画にも行けるし、朝もゆっくり眠れるはずです。
悲しいかな、わたしたちは1一日24時間という単位の中で生きる以外の選択肢はありません。

では、その24時間の中で、人はなぜ朝になると目覚め、昼間は活動し、夜になると眠くなるのでしょう。それは、体の中にリズムを刻む時計が備わり、指示を与えているからです。
これが、いわゆる「体内時計」です。体内時計は、朝と夜のセットで1日という認識をしています。そして、光によってそれを感知しています。明るいところにいれば、ここは昼だなと思い、暗いところで眠ると、ここは夜だなと思うわけです。

このセットによって、1日が経過したと判断します。体内時計の周期は24時間ではなく25時間です。したがって、光がまったく入らず、温度もー定のほら穴で時間を知らずに生活すると、1日1時間ずつ時間がずれてしまいます。

つまり、12日後に真夜中の12時と正午が逆転し、24日後に元に戻るのです。もし、体内時計のままに1日を送れば、日付や時間の単位がずれてしまい、混乱を招くでしょう。そこで、わたしたちは社会の時間の動きに合わせて、毎朝体内時計を一時間ずつ早めるようにしているのです。とはいえ、毎朝体内時計に変化が起こっているわけではありません。いつもの時間に目覚まし時計が鳴り、目をこすりながら起きることで、1時間の調整を行なっているということです。

この一時間の修正に、光は欠かせない要素です。太古の昔から、体は陽が昇れば夜が終わったと認識してきたのですから、雨戸やカーテンを開けて朝の光を感じることで、目覚まし時計で叩き起こされた体が目覚めていくわけです。

朝起きられないのは、体の中の自然破壊

人は昔から、この体内時計のリズムに合わせて生活をしてきました。体内時計のリズムは、もともとは「日の出」と「日の入り」という太陽の周期に関係していたのだろうといわれています。昼間の明るいうちに活動し、夜の暗闇は静かに身を潜め、獣などの攻撃から逃れようとした太古の生活のリズムが、長年のあいだにすっかり体に備わったのでしょう。

ところが、いつからか夜眠れないとか、朝起きられないという人たちが出現しました。これは、体の中の自然破壊ともいえるでしょう。本来の体内時計からいえば、陽が昇ると同時に目覚め、陽が沈むと同時に眠りにつくのが本当です。しかし、今は朝起きるといっても、陽が昇ってからずいぶん時間が過ぎています。

人は、時代が進むとともに、社会のしくみに応じて体内時計を四〜五時間ずらしてきたわけです。現在、環境問題は地球にとって重要なテーマになっています。森林の伐採が地球にどういう影響を及ぼすのかが、すぐにはわからなかったからこそ、今たいへんな問題になっているのではないでしょうか。

「体の中の自然」も同じです。夜中まで起きている日があれば、昼過ぎまで眠っている日もあるという、体内時計に反した生活をしていても、すぐに体に影響が出るわけではありません。しかし、徐々に破壊され、気がついたときには眠気を感じとるセンサーも、朝日覚めるセンサーもおかしくなって、いつ眠っていつ起きればいいのかが、体自身ですらわからなくなってしまうこともありうるのです。

眠りのリズムは体のリズムと連動している

体内時計は、睡眠と覚醒のためだけに作動しているのではありません。トイレに行きたくなったり、お腹が空いたり、血圧や体温が上がったり下がったりすることを含む、すべての生体のリズムを刻んでいるのです。これを「サーカディアンリズム」といいます。
このサーカディアンリズムは、体の各器官で個々になりたっているわけではなく、すべての器官がバランスをとって、まわるようになっています。したがって、どれか1つに狂いが生じると、すべてがおかしくなってしまうのです。

なかでも、体温は眠りと深く関係しています。たとえば、「熱がある」というのは、平熱よりも熱があるということです。つまり、それぞれに自分の平均体温があるわけですが、この平熱も一1日中一定なのではなく、睡眠と覚醒のリズムと連動して、上がったり下がったりしているのです。

通常、体温は明け方5~7時くらいに最も低くなり、起きてから徐々に上がります。そして夜の九時〜十一時くらいになるとピークに達し、下がり始めたころ眠くなります。眠っているあいだに下がり続けて、明け方最低になり、起きると再び上がるというリズムで、毎日動いています。もちろん、朝型、夜型というように、人によって多少のずれはありますが、だいたいこのようなリズムを刻んでいます。逆にいえば、体温が低いときは眠いし、高いときは目覚めるという体の状態になっているのです。そのため、夜のほうが朝より快適に眠りやすいし、朝のほうが目覚めやすいのです。にもかかわらず、深夜になって体温が下がっているのに、夜更かしをして明け方になつてから眠るような生活パターンでは、朝になって体温が上がっていてもなかなか目覚めることができません。
また、昼ごろまで寝ていた日は、体温が下がったからといって、いつもと同じ時間に寝つけるはずもないでしょう。

朝起きて夜眠ることで、体全体のバランスは保たれている

結局、睡眠と覚醒というリズムがおかしくなることで、体温、食欲、排壮、血圧、各種の神経系統などのすべてのリズムを崩してしまうことにもなりかねません。仕事がら、朝起きて夜眠るわけにはいかない人たちもいます。

たとえば、夜にお店をやっている人、月の半分くらいは海外出張に行く人、飛行機の国際線に乗務する人、夜勤の警備員や看護師さん、コンビニエンスストアの店員などです。現代は多くの人が、畳も夜もない生活をしています。

夜なら夜だけという仕事ならまだいいのですが、国際線のパイロットや客室乗務員などは、常にいろいろな国の時間で生活しなければなりませんから、毎日不規則な生活を強いられているようなものです。これでは、しだいに体も混乱し、さまざまなリズムが狂ってしまうでしょう。そのための対応策として、外国にいるときでも日本時間に合わせて寝起きをしているそうです。
そうしなければ、日本に帰ってきたときに調子が悪くなるといいます。看護師さんも日勤と夜勤が入りまじっていますから、体のリズムを壊しやすい仕事です。
看護師さんの中には、仮眠などで調整をし、昼と夜のリズムを壊さないようにしている人も多いようです。

血圧、ホルモン、体温などは自分で調整するのはとても難しいものです。けれども、いつ眠っていつ起きるかなら、自分でもコントロールできます。ですから、生体のリズムをスムーズに回転させるには、睡眠と覚醒をしっかりおさえればいいともいうことができます。
つまり、朝起きて夜眠るという生体の自然のリズムは、完堅なまでに体のバランスを保っているというわけです。

夜眠らないと睡眠時聞が少なくなるだけ

社会の時間帯は昼間が中心ですから、銀行に行く、郵便局に行くなど、日中のうちにすませなければならないことは数多くあります。

長年夜の仕事がメインになるスナックのママをやっている人がいます。お店が終わるのが夜中の3時、そのあと片付けをしていると、寝るのが毎朝5時とか6時になるそうです。それでも、毎日朝の十10時時くらいには起きるというので、「睡眠が足りないでしょう」と尋ねると、昼間のお付き合いがあるので、眠っているわけにはいかないといいます。

社会とずれた時間帯ではあるけれど、自分にとっては規則正しい生活をしようと思っても、先方の都合で昼間寝ていられないということもあるはずです。

ですから、夜寝ておかないと、結局、睡眠時間が少なくなってしまいます。また、今の社会の時間帯の中では、夜眠ったほうが規則正しい睡眠がとりやすいともいえます。毎日規則正しく、朝寝て夕方起きている人でも、休日にはデートをしたり、家族と出かけることもあるでしょう。

もし、デートの相手が日中に会社に勤めている人なら、遊園地やピクニックに行こうと思えば、待ち合わせは午前の10時ごろになるはずです。普段ならぐっすり眠っている時間帯ですから、体は時差ボケの状態で、今が昼なのか夜なのか混乱してしまうでしょう。
規則正しい生活ならば、いつ寝ていつ起きてもいいような気がするかもしれませんが、昼間中心の社会では、そのリズムで365日を送ろうとしても、思うようにはできません。
ことに、夜起きている人には、昼間も何かと起きていなければならない場合も多く、不規則で、睡眠時間も少なくなりがちです。ですから、日本で生活している以上、朝は起きて夜は寝たほうが、寝やすいし起きやすいということになります。

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