苦手な朝を克服

眠りとは?

睡眠にもさまざまな種類がある

心地よく眠れない人が増えたり、眠りに村する障害が話題になるようになったのは、ここ数十年です。それまでは、眠りとは何なのか、人はなぜ眠るのだろうかなどとは、あまり考えることもありませんでした。
したがって、睡眠に関する研究も遅れていましたから、現在、いざ眠りとは何かと考えてみると、そのメカニズムはまだまだ解明されていない部分が多いのです。

それほど複雑で、謎が多いといえます。ですが、簡単にいえば、睡眠と覚醒をコントロールしているのは脳だということができます。しかも、睡眠時と覚醒時に働く脳はそれぞれ違うのです。起きているときは、脳はさまざまな刺激に反応するような態勢になつています。したがって、わたしたちは意識もあるし、体も緊張しています。反対に、眠っているときは、そのときのことを何も覚えていないことからもわかるように、無意識で体しかんもだらりと弛緩しています。

しかし、もし眠っているときに、脳がいっさいの刺激に反応しなくなったとしたら、わたしたちは死んでしまいます。睡眠のあいだにも起きて働いてくれる部分があるから、生命が維持できるのです。また、わたしたちは眠気を感じて眠りにつきますが、その眠気の信号を送っているのも脳の、ある部分です。睡眠と覚醒とは、脳によってコントロールされているのですから、脳波を測定することで、眠りの一端を知ることができるわけです。

当然、眠っているときと起きているときの脳波は違います。そして眠っているときでも、脳波は一定の動きではなく変化しているのです。このことは、睡眠にもいろいろな種類があることを示しています。

レム睡眠とノンレム睡眠

自分が眠っているあいだのことを、だれも自覚することはできません。いつから眠りに入ったのかを明確に規定するのも困難であり、意識はあるような気がするけれども体が思うように動かないといった金縛り状態のときは、自分が目覚めていたのか眠っていたのかも、はっきりとはわからない感じもします。

それは、眠るということが、覚醒からパタツと睡眠に入り、またぱたっと起きるという単純なことではないからでしょう。

ひと口に睡眠といっても、大きく分けると、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2種類の眠りがあります。「レム」とは「急速な眼球の運動」という意味です。
眠っているのに目玉がきょろきょろと動き、脳波も目覚めているかのような波型に変化する時間帯があります。そして、この状態の眠りをレム睡眠、そうではない場合をノンレム睡眠といいます。

わたしたちが眠りにつくとき、まずノンレム睡眠が訪れます。ノンレム睡眠は、脳波が大きくゆっくり振動している状態で、眠りの深さによって4段階に分かれます。第一段階ではまだ浅く、それがだんだんと深くなって第4四段階まで移行するのですが、その変化のようすは、脳波の動きを見ればわかります。
起きていて脳が活発に活動しているときは、ベータ波という波が出ています。そして、瞑想状態のように目を閉じてリラックスし、落ち着いた状態のときは、アルファー波が出ます。だんだん眠りを感じてくるとシータ波が出るようになり、眠りに入ると紡錘波といわれる波が出ます。
さらに、深い睡眠に入ると、デルタ波がたくさん出ます。

1セット90分の睡眠周期が繰り返される

眠りについてから深くなるまで、脳波は次のように変化していきます。第一段階は、横になって静かに日を閉じ、うとうとしてきたころです。
呼吸や心拍などは多少遅くなりますが、規則正しく繰り返され、目を覚ましても眠っていたのかさえはっきりとはわからないくらいの「寝入りばな」です。

深夜にビデオやDVDなどを観ていて、一瞬うとうとしてしまったというのもこの段階です。ここで眠ってしまえば、徐々に深い眠りに入っていきます。
ところが、ビデオやDVDを最後まで観たいがために、一旦停止にして冷たい飲み物などを飲み、また観始めると、今度はビデオやD VDが終わっても目がさえて眠れなくなるのです。

そのようなことがなければ、通常は第一段階のあと、すぐ第二段階に移行します。ただし、この第二段階も眠りはまだ浅いので、物音などで脳波は反応し、声をかけられれば起きてしまいます。第三、第四段階に入ると、名前を呼ばれても、物音がしても、簡単には目を覚まさず、無理やり起こされても、一瞬何が起こったのかわからないくらいの深い眠りになります。

この段階で子供を起こすと、泣き出したり、夢遊病者のようにふらふらと歩きますが、あとになっても覚えていないくらいです。これがノンレム睡眠の変化です。このあとにレム睡眠が現れ、眼球は急速に動き、脳波は速く、目が覚めているような状態を示します。にもかかわらず、体は弛緩し、金縛りのときのように思うようには動きません。
脈拍数は多くなり、呼吸は浅く不規則になります。人間の眠りには、ノンレム睡眠がだんだんと深くなり、そのあとレム睡眠が訪れるという1セットが、約90分を単位として、一晩に何度も周期的に訪れます。
たとえば、一晩に8時間眠ったとすると、この90分1セットの睡眠周期が5回線り返されていることになります。

人が眠らないと生きていけないのは?

食欲、性欲、睡眠欲は、欠くことのできない三大欲求だ、とよくいいます。なかでも、眠らせないことが拷問にまでなるくらいですから、人間の睡眠欲は非常に大きいものです。

ですが、わたしたちは、なぜ眠らなければ生きていけないのでしょう。残念ながら、この疑問はいまだに研究中であり、明確に説明することはできません。
ただ、現在考えられることは、眠ることは、単に体を休息させるというよりも、大脳を休ませる役割が大きいということです。体を休息させるだけなら、横になるだけでもいいはずです。それなのに、一日中体を動かさなくても眠くなるのですから、休むのは脳だと考えてもいいのかもしれません。
休むといっても、すべての脳が活動を停止するというわけではありません。それでは生命が維持できませんから、意識がないだけで、眠っているときでも、脳の、ある部分は働いているわけです。

当然ですが、わたしたちは眠ると疲れがとれ、元気になります。眠っているあいだに疲労を回復し、さらに体内でエネルギーを蓄えているのです。

「軽い風邪ならあたたかくして寝ていれば治る」というのも、安静にしていればエネルギーを消費しないばかりか、快適な睡眠のあいだに、・本来人間が持っている免疫力が強化されているからです。
ちなみに風邪を自分の免疫力で尚したい場合は、睡眠以外に体を温めることも重要です。
また、人間の発育を促す成長ホルモンも眠っているあいだに分泌されます。「寝る子は育つ」というのは本当なのです。眠っているあいだであっても、脳や体はすべて休んでいるわけではなく、起きているときとは違う、眠りのための働きをしています。ですから、眠くなるのは、力を使い果たし、それ以上動けなくなるからではありません。

1日のリズムの中に、起きて活動するパターンと静かに休ませるパターンがあり、睡眠は休ませる役割をになっているのです。つまり、起きているときと眠っているときが交互に訪れることで、体のバランスがとれるようになっているのです。起きることも眠ることも、自然のメカニズムといえます。

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